大白法・平成11年12月1日刊(第538号より転載)御書解説(080)―背景と大意
本抄は、文永九(1272)年五月二日、大聖人様が五十一歳の御時に、佐渡
文永八(1271)年、大聖人様が竜の口の
大聖人様は、本抄をお認めの二カ月ほど前に、人本尊開顕の書である『開目抄』を
特に本抄には「本門寿量品の三大事」との御言葉があります。三大事とは三大秘法の御事で、大聖人様が本抄において、初めて三大秘法を示されたものであり、そこに佐渡配流以後の御化導の重要な意義が拝されるのです。
はじめに、佐渡の地まではるばる使いの者を遣わして、大聖人様の身を案じる金吾殿の信心に深謝され、御自身の忍難弘教の法悦を述べられます。そして、大聖人様が弘通される御法門は、天台・伝教の弘通された迹門の法華経より、一重立ち入ることを示され、「本門寿量品の三大事」(三大秘法)の法体を要約して示されます。
次いで、その法体の南無妙法事華経を諸法実相に約されて境智の二法を示され、煩悩即菩提・生死即涅槃の御法門を御教示されます。
次に、大聖人様が様々な難に値われるのは過去の法華誹謗によると、九界の凡夫の宿業に約して御教示され、さらに御自身が上行菩薩の再誕であることをほぼ示されます。そして、その上行菩薩を守護する金吾殿の信心を賞嘆され、夫婦和合して信心に励むよう励まされて本抄を結ばれています。
一つ目は、法華経を弘通する者は、正法の故に必ず大難に値うということです。我々凡夫にとって難に値うことは
本抄には、
「今は生死切断し仏果をうべき身となればよろこばしく候」
と仰せですが、これは大聖人様御自身が、上行菩薩の再誕たる法華経の行者として、身命に及ぶ大難に値われた功徳により、仏果を得られたこと、すなわち人本尊とされての久遠元初の御本仏の御内証を密示しておられると拝されます。
また、大聖人様は本抄に、九界の凡夫の宿業に約して難に値うこともお示しです。つまり、過去世の法華経誹謗の罪によって難に値うと仰せのように、私たちは過去における罪障が深き故に難に値うのであり、難に値うことは成仏するための法華経修行と捉えるべきなのです。故に、その値難は罪障消滅のためであり、さらに変毒為薬して大功徳となり、成仏の仏果を得ることができるのです。
金吾殿は、大聖人様が竜の口に連行されたとき、大聖人様にもしものことがあれば、自らも腹を切ってお供しようとされました。大聖人様は、この大難に際しての不自惜身命の御奉公に対し、金吾殿を法華経の行者と賞嘆されています。
宗旨建立七百五十年を二年半後に控えた今日、御本仏日蓮大聖人の血脈を承継あそばされる御法主日顕上人猊下には、創価学会の三宝破壊の大難を御一身に受けられながら、大法弘通のため大慈悲の御教導をあそばされています。
私共も、どのような難があろうとも、退くことなく魔を粉砕し、
二つ目は、
「今日蓮が弘通する法門は
と仰せになって、
「本門寿量品の三大事とは是なり」
と、末法に弘通されるべき大法が三大秘法に
御法主上人猊下は本抄の、
「南無妙法蓮華経の七字ばかりを修行すればせばきが如し。されども三世の諸仏の師範、十方
との御文を三大秘法に約され、「三世の諸仏の師範」の文意は「本門の本尊」、「十方薩埵の導師」の文意は「本門の題目」、「一切衆生皆成仏道」の文意は「本門の戒壇」に当たるとして、本抄に三大秘法の意義が篭められていることを御指南あそばされています。(大日蓮559号参照)
私たちは、大聖人様が大難を忍ばれ、妙法蓮華経を弘通あそばされたのは、一切衆生の成仏のために三大秘法総在の本門戒壇の大御本尊を建立あそばされるためであられたことを常に忘れず、御報恩の誠を尽くすことが大切です。
三つ目には、境智冥合の当体たる御本尊の義をもって、煩悩即菩提・生死即涅槃の御法門をお示しのことです。本抄に、
「境智
と仰せですが、この前文に釈迦・多宝の二仏を諸法実相に約して、「諸法」を多宝如来、「実相」を釈尊と御指南され、次に多宝如来を「境」、釈尊を「智」と御指南されています。そしてこの境智の二法は冥合して久遠元初の妙法蓮華経の法体に具わることを御教示あそばされます。この境智冥合の当体とは、人法一箇の御本尊の御事なのです。
そして本抄には、
「男女交会のとき南無妙法蓮華経ととなふるところを、煩悩即菩提・生死即涅槃と云ふなり」
と御指南あそばされています。これはまさしく、社会の堕落と乱れの根源ともなっている煩悩の問題を、根源的に解決する方途こそ妙法であることの御指南と拝すべきでしょう。
私たちは煩悩を離れぬままの姿ではあっても、御本尊を信じて南無妙法蓮華経と常に唱え奉るとき、御本尊の功徳により、生活の上に清浄な成仏の果報を得て、人生を見事に荘厳することができるのです。これを煩悩即菩提・生死即涅槃と御指南されているのです。
最後に、
「日月両眼
と、夫婦が
故に一家において、夫婦のいずれかが未入信であれば、信心についている者がますます自らの信心を励まし、連れ合いを折伏しなければなりません。
すでに夫婦共に信心している場合は、勤行や唱題を一緒にできるように生活を工夫し、また、寺院参詣や総本山への登山参詣などの行動を共にして信心の喜びを共有し、さらにその姿を子供に示して、立派な正法の後継者に育ててまいりましょう。
私たちには、その責務があることを自覚せねばなりません。そして一家和楽の信心で、家族全員晴れ晴れと、平成十四年、法華講三十万総登山を迎えようではありませんか。
「出陣の年」の本年初頭、宗門は僧俗の代表が総本山に集い、御法主日顕上人猊下の御もとに「出陣式」を挙行し、宗旨建立七百五十年の大佳節を目指して僧俗一致の大前進を開始いたしました。
明年は、折伏弘教の波動をさらに大きなうねりとして、着実に前進すべく、「折伏実行の年」と銘打たれたのです。大聖人様の弟子檀那として、決してこの潮流に乗り遅れることがあってはなりません。
大聖人様は本抄に、
「火をきるに
と仰せです。また御法主上人猊下は出陣の意義について、
「一人も漏れなく地涌の菩薩たる折伏の陣列に並ぶこと」(大白法517号)
と御指南せられています。
自分自身に、さらに講中の一人ひとり、講中の隅々に至るまで、決して怠慢の姿があってはなりません。今月は一年の締め括りであり、