上野郷主等御返事  弘安五年一月一一日  六一歳

 

(★1587㌻)
 昔の徳勝童子は土のもちゐ()を仏にまいらせて一閻浮提の主となる。今の檀那等は二十枚の金のもちゐを法華経の御前にさゝ()げたり。後生の仏は疑ひなし。なんぞ今生にそのしるし()なからむ。恐々。
  正月十一日                日蓮花押    
 上()がうす(郷主)等のとのばら(殿原)
 
 昔の徳勝童子(とくしょうどうじ)は、土の(もち)を仏に供養して一閻浮提(いちえんぶだい)の主となった。今の檀那は、二十枚の金の餅を法華経の御前に(ささ)げた。後生に成仏することは疑いない。まして、今生にその(しるし)がないわけがない。恐々。
 正月十一日     日蓮花押   
上ののがうす等のとのばら