南条殿御返事  弘安三年九月  五九歳

五郎殿悲報事

 

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 はく()まい()ひとふくろ()いも()()給び了んぬ。(そもそも)なん()でう()の七ろう()()らう()どのゝ事、いままではゆめ()かゆめか、まぼろし()かまぼろしかとうたが()いて、そら()ごと()ゝのみをも()ひて候へば、此の御ふみにもあそばされて候。さてはまことかまことかと、はじめ()てうたがいいできたりて候。
 
 白米一袋、芋一駄を頂戴した。
 故南条七郎五郎殿のこと、今までは夢か夢か、幻か幻かと疑い、虚事とばかり思っていたが、この御手紙にも(実際に御逝去されたと)記されており、さては真実であろうかと、はじめてそう思う心がでてきたようである。