上野殿御返事  弘安三年一月三日  五九歳

 

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 十字(むしもち)六十枚・清酒(すみざけ)一筒(ひとつつ)薯蕷(やまのいも)五十本・(こう)()二十・串柿(くしがき)一連送り()び候ひ(おわ)んぬ。法華経の御宝前にかざ()(まい)らせ候。
 春の始めの三日、種々の物法華経の御宝前に捧げ候ひ(おわ)んぬ。花は開いて(このみ)となり、月は出でて必ず()ち、灯は油をさせば光を増し、草木は雨ふればさか()う、人は善根をなせば必ずさかう。其の上元三(がんざん)の御志元一(がんいち)にも超へ、十字の(もちい)満月の如し。事々又々申すべく候。
  正月三日    日蓮 花押
 上野殿