南条殿女房御返事   弘安元年五月二四日  五七歳

別名『八木書』

 

(★1227㌻)
 八木(はちぼく)二俵送り給び候ひ(おわ)んぬ。度々(たびたび)の御志申し尽くし難く候。
 (それ)水は寒積れば氷となる。雪は年(かさ)なって(すい)(しょう)となる。悪積れば地獄となる。善積れば仏となる。女人は嫉妬かさなれば毒蛇となる。法華経供養の功徳かさならば、あに竜女があとをつがざらん。山といひ、河といひ、馬といひ、下人といひ、かたがたかんなん(艱難)のところに、度々の御志申すばかりなし。御所労の人の臨終正念・霊前浄土疑ひなかるべし。
  五月二十四日    日蓮 花押
 御返事
 
 米を二俵お送りいただきました。度々のお志はお礼の申し上げようもありません。
 水は寒さが積れば氷となり、雪は年を重ねれば水精となります。悪が積れば地獄に堕ち、善行を積めば仏となります。女人は嫉妬が重なれば毒蛇になります。法華経供養の功徳が重なれば、竜女の後を継いで成仏することは間違いありません。
 山といい、河といい、馬といい、下人といい、何かと苦労の多いところに度々のお志、申し述べようもありません。かねて病気であった人が臨終正念であったとのこと、霊山浄土は絶対に疑いありません。
  五月二十四日    日蓮 花押
 御返事