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(★1219㌻) 日蓮流罪して (★1220㌻) 人の |
お便りの件、承りました。 日蓮を流罪してその報いで先々これまで種々の災難が重なっているのに、また何かと言われているようなことがあるとは思えないが、しかし、人の運が尽きて滅びるような時には、考えられないようなことをするもので、そのようなことがないとはかぎるまい。しかし、もしそれがあれば、日蓮の主張を用いてもらうよりも百千万億倍も幸いである。 今度で三度の流罪になる。法華経もよもや日蓮を怠慢な行者とは思わないであろう。釈迦・多宝・十方の諸仏・地涌千界の諸菩薩の御加護があるはずであるからそれを今度こそ見極めたいものである。ぜひとも、言われているようなことが起こることを願っている。そして雪山童子の跡を継ぎ不軽菩薩のような身になりたいものである。このまま生き長らえてもいたづらに疫病にかかって倒れるか、または年老いて死んでしまうからである。嘆かわしいことである、嘆かわしいことである。願わくば法華経のために国主に憎まれて、今度・生死を離れたいものである。天照太神・正八幡大菩薩・日月天・帝釈・梵天大王の等の仏前の誓約を今度こそ試しみたいものである。 |
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事々さてをき候ぬ。各々の御身の事は此より申しはからうべし。さでをはするこそ法華経を十二時に行ぜさせ給ふにては候らめ。あなかしこあなかしこ。 御 四月十一日 日 蓮 花押 |
以上述べたことはさておいて、各々の御身のことはこれより諸天に守護をお願い申し上げる。だからそのまま出仕されておられることこそ、法華経を十二時に修行されていることになるのである。あなかしこ、あなかしこ。 宮仕えを法華経の修行とおもいなさい。経に「一切世間の治生の産業は皆、実相と相違背しない」と説かれているのはこのことである。くれぐれもお便りのご配慮のこと、承知しております。恐恐謹言。 四月十一日 日蓮花押 |