四条金吾殿御返事 建治三年 五六歳

 

(★1194㌻)
 法華経を本迹相対して論ずるに、迹門は(なお)始成正覚の旨を明かす。故にいまだ留難(るなん)かゝれり。本門はかゝる留難を去りたり。然りと雖も題目の五字に相対する時は末法の機にかなはざる法なり。真実一切衆生色心の留難を(とど)むる秘術は唯南無妙法蓮華経なり。

日蓮 花押

 四条金吾殿御返事

 
 法華経の本門と迹門を相対して論じてみると、迹門はなお始成正覚という観点から論じているので、いまだ留難がかくれているのである。本門はこのような留難をまぬかれている。
 しかしながら、本門といえども門底独一本門の題目の五字に相対した時は、末法の衆生の機根に合わない法となる。
 真実に、一切衆生にとって、色心の留難を打ちやぶる秘術は、ただ南無妙法蓮華経以外にないのである。

日蓮 花押

 四条金吾殿御返事