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(★792㌻) |
お手紙をくわしく拝見いたしました。さて、宝塔への御供養の品として、銭一貫文と白米、それに種々のおくり物を、確かに受け取りました。あなたのこの志を、御本尊・法華経に丁重に申し上げました。御安心ください。 |
| 一、御文に云はく「多宝如来 |
あなたのお手紙に「多宝如来ならびに地から涌現した宝塔は何を表しているのでしょうか」という質問がありました。この法門は非常に重要である。この宝塔の意義を解釈するのに、天台大師が法華文句の巻八に釈せられているのには証前起後の二重の宝塔がある。証前は迹門、起後は本門である。あるいはまた閉塔は迹門、開塔は本門である。これは即ち境智の二法をあらわしている。これらは煩雑になるので、ここではこれ以上はふれないでおく。 |
| あまりにありがたく候へば宝塔をかきあらはしまいらせ候ぞ。子にあらずんば |
あまりにもありがたいことなので、御本尊を書き顕して差し上げます。わが子でなければ譲ってはならない。信心強盛な者でなければ見せてはならない。日蓮の出世の本懐とはこの宝塔の本尊をいうのである。 | |
| 阿仏房しかしながら北国の導師とも申しつべし。浄行菩薩はうまれかわり給ひてや日蓮を御 三月十三日 日蓮 花押 阿仏房上人所へ |
阿仏房、あなたはまさしく北国の導師ともいうべきであろう。浄行菩薩が生まれ変わって日蓮を訪ねられたのであろうか。まことに不思議なことである。あなたの厚いお志の由来を日蓮は知らないが、上行菩薩のご出現の力にお任せするのである。別の理由があるわけでないであろう。宝塔を夫婦ひそかに拝みなさい。くわしいことはまた申し上げよう。恐恐謹言。 三月十三日 日蓮花押 阿仏房上人所へ |