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(★743㌻) 銭二貫文 有情の第一の財は命にはすぎず。此を奪ふ者は必ず |
銭二貫文をいただきました。 有情の第一の財は命にすぎるものはない。これを奪う者は、必ず三悪道に堕ちる。それゆえ、転輪聖王は十善戒のはじめには、不殺生戒を守り、仏の小乗経のはじめには五戒を説き、そのはじめには不殺生戒を説いている。大乗の梵網経の十重禁戒のはじめにも不殺生戒を説いている。法華経の寿量品は、釈迦如来の不殺生戒の功徳に相当する品なのである。それゆえ、殺生をする者は、三世の諸仏に捨てられ、六欲天もこの人を守ることはない。このことは世間の学者も知ることであり、日蓮もだいたい心得ている。 |
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今の世は彼の世に当たれり、国主日蓮が申す事を用ふるならば彼がごとくなるべきに、用ひざる かまえてかまへて御用心候べし。いよいよ 九月二十六日 日蓮 花押 左衛門尉殿御返事 |
今の世は、仙予国王や有徳王の世に相当する。国主が日蓮のいうことを用いるならば、かの仙予国王や有徳王の時のようになるであろうに、用いない上、かえって、法華経の敵の味方となり、一国こぞって、日蓮を逆に責めている。そして、上一人から下万民にいたるまで、皆五逆罪にすぎた謗法の人となってしまった。さて、あなた方もこの謗法の国主の側の人である。心は日蓮に同意であっても、身は別であるから、与同罪は逃れ難いことであったのに、主君の耳にこの法門を説き聞かせたことは、実にすばらしいことである。たとえ主君が今は用いなくとも、あなたの与同罪は、免れたのである。 これから後は、口を慎んでいきなさい。また、諸天も必ずやあなたを守るであろう。日蓮からも諸天に申しつけましょう。 心して用心に用心をしていきなさい。いよいよ、あなたを憎む人がつけ狙うであろう。酒宴は、夜は一切やめなさい。ただ、女房と酒を飲んで、何の不足がありましょう。他人との昼の酒宴でも、油断してはいけません。酒を離れては、敵も狙う隙があるはずはない。くれぐれも用心をしていきなさい。恐恐謹言。 九月二十六日 日蓮花押 左衛門尉殿御返事 |