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(★741㌻) |
鵞目十連・かわのり二帖・しゃうかう(生姜)二十束を頂戴しました。 鎌倉でお会いしたことは、その時限りのことかと思っていたのに、忘れられることがなかったとは、申し述べようもありません。故上野殿が生きておられたら、常に法門などを申し上げ、またお話をうけたまわりたいとものと、思い嘆いていたところ、御形見に御身を若くして(子息)を遣わしおかれたのでしょうか。お心まで似ておられることは言いようもありません。(故上野殿は)法華経によって成仏されたと承って、はるばる墓参をしたのです。 |
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又この御心ざし申すばかりなし。今年の 七月二十六日 日蓮 花押 御返事 |
また、この度の御志は申し上げようがありません。今年(六月)、飢饉のなかで始めたこの身延山中の生活は、木の下に木の葉を敷いたような住み家であり、御推量いただきたい。このほど読んだ御経の一分を故上野殿に廻向申し上げました。ああ、人はよき子を持つべきものであると、涙を抑えることができませんでした。妙荘厳王は浄蔵・浄眼の二人の王子に仏道へ導かれました。彼の王は悪人であり、故上野殿は善人であります。彼には似るべくもありません。 南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経 七月二十六日 日蓮 花押 御返事 |