土木殿御返事  文永一〇年一一月三日  五二歳

 

(★688㌻)
 仕り候なり。褒美に非ず、実に器量者なり。来年正月大進阿闍梨と越中に之を遣はし去るべし。
 白小袖一つ給び候ひ了んぬ。今年、日本国一同に飢渇の上、佐渡国には七月七日已下、天より忽ちに石灰虫と申す虫の雨下り一時に稲穀損失し了んぬ、其の上疫々処々に遍満す。方々死難脱れ難きか。事々紙上に之を尽くし難し。恐々謹言
 十一月三日    日 蓮 花押
 土木殿御返事
 
 …しました。
 ほめていうのではないが、まことに器量者である。来年の正月、大進阿闍梨房とともに越中(現在の富山県)にこれを派遣するつもりである。
 白小袖を一つ受けとりました。今年は日本国全体に飢渇のうえに、佐渡の国には七月七日以降、空から急に石灰虫(いなご)という虫が降ってきたのと雨等によって、いちどきに稲や穀物を損い、そのうえ伝染病があちこちに広く充満し、人々は死を脱れがたいようである。
いろいろなことは紙上に尽くしがたい。恐恐謹言。
 十一月三日    日 蓮 花押
 土木殿御返事