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(★426㌻) 釈迦仏御造立の御事。無始曠劫よりいまだ顕はれましまさぬ己心の一念三千の仏、造り顕はしましますか。はせまいりてをがみまいらせ候はばや。「欲令衆生開仏知見乃至然我実成仏已来」は是なり。但し仏の御開眼の御事は、いそぎいそぎ伊よ房をもてはたしまいらせさせ給ひ候へ。法華経一部、御仏の御六根によみ入れまいらせて、生身の教主釈尊になしまいらせて、かへりて迎ひ入れまいらせさせ給へ。自身並びに子にあらずばいかんがと存じ候。 |
釈迦仏を御造立になったとの事、無始曠劫より今日まで、いまだ一度も顕れたことのない己心の一念三千の仏を、いま造立し顕現されたのであるか。急ぎ参って拝し奉りたいものである。法華経方便品第二に「衆生をして仏知見を聞かしめんと欲す」といわれ、如来寿量品第十六に「然るに我、実に成仏してより已来、無量無辺」と宣べられたその釈尊の造立顕現である。 ただし、この仏の御開眼の事はすみやかに伊予房におこなわせなさい。(伊予房に)法華経一部を御仏の御六根に読み入れ参らせて、生身の教主釈尊となし奉ってお迎え申し上げ奉安しなさい。それにはあなた御自身ならびに御子息でなければどうかと思われる。 |
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御所領の堂の事等は、大進の阿闍梨がきゝて候。かへすがへすをがみ結縁しまいらせ候べし。いつぞや大黒を供養して候ひし、其の後より世間なげかずしておはするか。此の度は大海のしほの満つるがごとく、月の満ずるが如く、福きたり命ながく、後生は霊山とおぼしめせ。 九月二十六日 日蓮花押 進上 富木殿御返事 |
御所領の堂の事については大進の阿闍梨が承知している。かえすがえすもこの御仏を拝し奉り、成仏得脱を願うべきである。いつか大黒を供養されたことがあったが、そののちより世間のわずらわしきことはありませんが、このたびの功徳は大海の潮が満つるように、また月が満つるように、また福が来たり、命も永らえて後生は霊山に生まれることは間違いないと思いなさい。 九月二十六日 日蓮花押 進上 富木殿御返事 |