596
爾時普賢善薩。以自在神通力。 爾の時に普賢善薩、自在神通力、
威徳名聞。与大菩薩。 威徳名聞を以て、
無量無辺。不可称数。従東方来。 大菩薩の無量無辺不可称数なると、東方より来る。
所経諸国。普皆震動。雨宝蓮華。 経たる所の諸国、普く皆震動し、宝蓮華を雨らし、
作無量百千万億。種種伎楽。 無量百千万億の種種の伎楽を作す。
又与無数諸天。龍。夜叉。乾闥婆。 又、無数の諸天、龍、夜叉、乾闥婆、
阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩睺羅伽。 阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽の、
人非人等。大衆囲遶。 人非人等の大衆の囲遶せると、
各現威徳。神通之力。 各威徳、神通の力を現じて、
597
到娑婆世界。耆闍崛山中。 娑婆世界の耆闍崛山の中に到って、
頭面礼釈迦牟尼仏。右遶七帀。 頭面に釈迦牟尼仏を礼し、右に遶ること七帀して、
白仏言。 仏に白して言さく、
世尊。我於宝威徳上王仏国。 世尊、我、宝威徳上王仏の国に於て、
遙聞此娑婆世界。説法華経。 遙かに此の娑婆世界に、法華経を説きたもうを聞いて、
与無量無辺。百千万億。諸菩薩衆。 無量無辺百千万億の諸の菩薩衆と、
共来聴受。 共に来って聴受す。
唯願世尊。当為説之。 唯願わくは世尊、当に為に之を説きたもうべし。
若善男子。善女人。於如来滅後。 若し善男子、善女人、如来の滅後に於て、
云何能得。是法華経。 云何にしてか能く是の法華経を得ん。
仏告普賢菩薩。 仏、普賢菩薩に告げたまわく、
若善男子。善女人。成就四法。 若し善男子、善女人、四法を成就せば、
於如来滅後。当得是法華経。 如来の滅後に於て、当に是の法華経を得べし。
一者為諸仏護念。二者殖諸徳本。 一には諸仏の護念を為、二には諸の徳本を殖え、
三者入正定聚。 三には正定聚に入り、
四者発救一切衆生之心。 四には一切衆生を救うの心を発せるなり。
598
善男子。善女人。如是成就四法。 善男子、善女人、是の如く四法を成就せば、
於如来滅後。必得是経。 如来の滅後に於て、必ず是の経を得ん。
爾時普賢菩薩。白仏言。 爾の時に普賢菩薩、仏に白して言さく、
世尊。於後五百歳。濁悪世中。 世尊、後の五百歳濁悪世の中に於て、
其有受持。是経典者。 其れ、是の経典を受持すること有らん者は、
我当守護。除其衰患。 我当に守護して、其の衰患を除き、
令徳安穏。 安穏なることを得せしめ、
使無伺求。徳其便者。 伺い求むるに、其の便を得る者無からしむべし。
若魔。若魔子。若魔女。若魔民。 若しは魔、若しは魔子、若しは魔女、若しは魔民、
若為魔所著者。若夜叉。若羅刹。 若しは魔に著せられたる者、若しは夜叉、若しは羅刹、
若鳩槃荼。若毘舎闍。若吉蔗。 若しは鳩槃荼、若しは毘舎闍、若しは吉蔗、
若富単那。若韋陀羅等。 若しは富単那、若しは韋陀羅等の、
諸悩人者。皆不得便。 諸の人を悩ます者、皆便を得ざらん。
是人若行若立。読誦此経。 是の人、若しは行き、若しは立ちて、此の経を読誦せば、
我爾時乗。六牙白象王。 我爾の時に、六牙の白象王に乗って、
与大菩薩衆。倶詣其所。 大菩薩衆と倶に其の所に詣って、
599
而自現身。供養守護。安慰其心。 自ら身を現じ、供養し守護して、其の心を安慰せん。
亦為供養。法華経故。 亦法華経を供養せんが為の故なり。
是人若坐。思惟此経。 是の人、若しは坐して、此の経を思惟せば、
爾時我復。乗白象王。現其人前。 爾の時に我復、白象王に乗って、其の人の前に現ぜん。
其人若於法華経。 其の人、若し法華経に於て、
有所忘失。一句一偈。我当教之。 一句一偈をも、忘失する所有らば、我当に之を教えて、
与共読誦。還令通利。 与共に読誦し、還って通利せしむベし。
爾時受持読誦。法華経者。 爾の時に、法華経を受持し、読誦せん者、
得見我身。甚大歓喜。転復精進。 我が身を見ることを得て甚だ大いに歓喜して、転復精進せん。
以見我故。即得三昧。及陀羅尼。 我を見るを以ての故に、即ち三昧、及び陀羅尼を得ん。
名為旋陀羅尼。百千万億旋陀羅尼。 名づけて旋陀羅尼、百千万億旋陀羅尼、
法音方便陀羅尼。得如是等陀羅尼。 法音方便陀羅尼と為す。是の如き等の陀羅尼を得ん。
世尊。若後世。後五百歳。濁悪世中。 世尊、若し後の世の後五百歳、濁悪世の中に、
600
比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。 比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷の
求索者。受持者。読誦者。書写者。 求索せん者、受持せん者、読誦せん者、書写せん者、
欲修習是法華経。 是の法華経を修習せんと欲せば、
於三七日中。応一心精進。 三七日の中に於て、応に一心に精進すべし。
満三七日已。我当乗六牙白象。 三七日を満て已らんに、我当に六牙の白象に乗って、
与無量菩薩。而自囲遶。 無量の菩薩の与に、而も自ら囲遶せられて、
以一切衆生。所憙見身。 一切衆生の見んと憙う所の身を以て、
現其人前。而為説法。示教利喜。 其の人の前に現じて、為に法を説いて、示教利喜すべし。
亦復与其。陀羅尼咒。 亦復、其に陀羅尼咒を与えん。
得是陀羅尼故。 是の陀羅尼を得るが故に、
無有非人。能破壊者。 非人の能く破壊する者有ること無けん。
亦不為女人。之所惑乱。 亦女人に惑乱せられじ。
我身亦自。常護是人。 我が身亦自ら、常に是の人を護らん。
唯願世尊。聴我説此陀羅尼。 唯願わくは世尊、我が此の陀羅尼を説とくことを聴したまえ。
即於仏前。而説咒曰 即ち仏前に於て、咒を説いて曰さく、
601
阿檀地(途売反一) 檀陀婆地(二) 阿檀地(途売反一) 檀陀婆地(二)
檀陀婆帝(三) 檀陀鳩賖隷(四) 檀陀婆帝(三) 檀陀鳩賖隷(四)
檀陀修陀隷(五) 修陀隷(六) 檀陀修陀隷(五) 修陀隷(六)
修陀羅婆底(七) 仏駄波羶禰(八) 修陀羅婆底(七) 仏駄波羶禰(八)
薩婆陀羅尼阿婆多尼(九) 薩婆陀羅尼阿婆多尼(九)
薩婆婆沙阿婆多尼(十) 薩婆婆沙阿婆多尼(十)
修阿婆多尼(十一) 僧伽婆履叉尼(十二) 修阿婆多尼(十一) 僧伽婆履叉尼(十二)
僧伽涅伽陀尼(十三) 阿僧祇(十四) 僧伽涅伽陀尼(十三) 阿僧祇(十四)
僧伽波伽地(十五) 僧伽波伽地(十五)
帝隷阿惰僧伽兜略(廬遮反) 帝隷阿惰僧伽兜略(廬遮反)
阿羅帝波羅帝(十六) 阿羅帝波羅帝(十六)
薩婆僧伽三摩地伽蘭地(十七) 薩婆僧伽三摩地伽蘭地(十七)
薩婆達磨修波利刹帝(十八) 薩婆達磨修波利刹帝(十八)
薩婆薩埵楼駄憍舎略阿と伽地(十九) 薩婆薩埵楼駄憍舎略阿と伽地(十九)
辛阿毘吉利地帝(二十) 辛阿毘吉利地帝(二十)
世尊。若有菩薩。 世尊、若し菩薩有って、
得聞是陀羅尼者。 是の陀羅尼を聞きくことを得ん者は、
当知普賢。神通之力。 当に知るべし、普賢神通の力なり。
602
若法華経。行閻浮提。 若し法華経の、閻浮提に行ぜんを、
有受持者。応作此念。 受持すること有らん者は、応に此の念を作すべし。
皆是普賢。威神之力。 皆是れ、普賢威神の力なり。
若有受持読誦。正憶念。 若し受持し、読誦し、正憶念し、
解其義趣。如説修行。 其の義趣を解し、説の如く修行すること有らん。
当知是人。行普賢行。 当に知るべし、是の人は普賢の行を行ずるなり。
於無量無辺諸仏所。深種善根。 無量無辺の諸仏の所に於て、深く善根を種えたるなり。
為諸如来。手摩其頭。 諸の如来の手をもって、其の頭を摩でたもうを為ん。
若但書写。是人命終。 若し但書写せんは、是の人命終して、
当生忉利天上。是時八万四千天女。 当に忉利天上に生ずべし。是の時に八万四千の天女、
作衆伎楽。而来迎之。 衆の伎楽を作して、来って之を迎えん。
其人即著七宝冠。 其の人、即ち七宝の冠を著て、
於采女中。娯楽快楽。 采女の中に於て、娯楽快楽せん。
何況受持読誦。正憶念。 何に況や、受持し、読誦し、正憶念し、
解其義趣。如説修行。 其の義趣を解し、説の如く修行せんをや。
若有人受持読誦。解其義趣。 若し人有って、受持し、読誦し、其の義趣を解せん。
是人命終。為千仏授手。 是の人命終せば、千仏に手を授けられて、
603
令不恐怖。不堕悪趣。 恐怖せず、悪趣に堕ちざらしめたもうことを為て、
即往兜率天上。弥勤菩薩所。 即ち兜率天上の弥勒菩薩の所に往かん。
弥勒菩薩。有三十二相。 弥勒菩薩、三十二相有って、
大菩薩衆。所共囲遶。 大菩薩衆に共に囲遶せらる。
有百千万億。天女眷属。而於中生。 百千万億の天女眷属有って、中に於て生ぜん。
有如是等。功徳利益。 是の如き等の功徳利益有らん。
是故智者。応当一心自書。 是の故に智者、応当に一心に自ら書き、
若使人書。受持読誦。 若しは人をしても書かしめ、受持し、読誦し、
正憶念。如説修行。 正憶念し、説の如く修行すべし。
世尊。我今以神通力故。 世尊、我今、神通力を以ての故に、
守護是経。於如来滅後。 是の経を守護して、如来の滅後に於て、
閻浮提内。広令流布。使不断絶。 閻浮提の内に広く流布せしめて、断絶せざらしめん。
爾時釈迦牟尼仏讃言。 爾の時に釈迦牟尼仏、讃めて言わく、
善哉善哉。普賢。汝能護助是経。 善哉善哉、普賢、汝能く是の経を護助して、
令多所衆生。安楽利益。 多所の衆生をして、安楽し利益せしめん。
604
汝已成就。不可思議功徳。深大慈悲。 汝已に不可思議の功徳、深大の慈悲を成就せり。
従久遠来。発阿耨多羅三藐三菩提意。 久遠より来、阿耨多羅三藐三菩提の意を発して、
而能作是。神通之願。守護是経。 能く是の神通の願を作して、是の経を守護す。
我当以神通力。 我当に神通力を以て、
守護能受持。普賢菩薩名者。 能く普賢菩薩の名を受持せん者を守護すべし。
普賢。若有受持読誦。 普賢、若し、是の法華経を受持し、読誦し、
正憶念。修習書写。是法華経者。 正憶念し、修習し書写すること有らん者は、
当知是人。則見釈迦牟尼仏。 当に知るべし、是の人は則ち釈迦牟尼仏を見るなり。
如従仏口。聞此経典。 仏口より此の経典を聞くが如し。
当知是人。供養釈迦牟尼仏。 当に知るべし、是の人は釈迦牟尼仏を供養するなり。
当知是人。仏讃善哉。 当に知るべし、是の人は仏善哉と讃む。
当知是人。為釈迦牟尼仏。 当に知るべし、是の人は釈迦牟尼仏の手をもって、
手摩其頭。当知是人。 其の頭を摩でたもうを為ん。当に知るべし、
為釈迦牟尼仏。衣之所覆。 是の人は釈迦牟尼仏の衣に覆わるることを為ん。
605
如是之人。不復貪著世楽。 是の如きの人は、復世楽に貪著せじ。
不好外道。経書手筆。 外道の経書、手筆を好まじ。
亦復不憙。親近其人。及諸悪者。 亦復憙って、其の人及び諸の悪者の、
若屠児。若畜猪羊鶏狗。 若しは屠児、若しは猪羊鶏狗を畜うもの、
若猟師。若衒売女色。 若しは猟師、若しは女色を衒売するものに親近せじ。
是人心意質直。有正憶念。有福徳力。 是の人は心意質直にして、正憶念有り、福徳力有らん。
是人不為。三毒所悩。 是の人は三毒に悩まされじ。
亦不為嫉妬。我慢。邪慢。増上慢。所悩。 亦嫉妬、我慢、邪慢、増上慢に悩まされじ。
是人少欲知足。能修普賢之行。 是の人は少欲知足にして、能く普賢の行を修せん。
普賢。若如来滅後。後五百歳。 普賢、若し如来の滅後、後の五百歳に、
若有人。見受持読誦。 若し人有って、法華経を受持し、
法華経者。応作是念。 読誦せん者を見みては、応に是の念を作すべし。
此人不久。当詣道場。 此の人は久しからずして、当に道場に詣して、
破諸魔衆。得阿耨多羅三藐三菩提。 諸の魔衆を破し、阿耨多羅三藐三菩提を得、
転法輪。撃法鼓。 法輪を転じ、法鼓を撃ち、
606
吹法螺。雨法雨。 法螺を吹き、法雨を雨らすべし。
当坐天人大衆中。師子法座上。 当に天・人大衆の中の、師子の法座の上に坐すべし。
普賢。若於後世。 普賢、若し後の世に於て、
受持読誦。是経典者。 是の経典を受持し、読誦せん者、
是人不復貪著。衣服臥具。 是の人は復、衣服臥具、
飲食資生之物。所願不虚。 飲食資生の物に貪著せじ。所願虚しからず。
亦於現世。得其福報。 亦現世に於て、其の福報を得ん。
若有人。軽毀之言。 若し人有って、之を軽毀して言わん。
汝狂人耳。空作是行。 汝は狂人ならく耳。空しく是の行を作して、
終無所獲。 終に獲る所無けん。
如是罪報。当世世無眼。 是の如き罪報は、当に世世に眼無かるべし。
若有供養。讃歎之者。 若し之を供養し、讃歎すること有らん者は、
当於今世。得現果報。 当に今世に於て、現の果報を得べし。
若復見受持。是経人者。出其過悪。 若し復是の経典を受持せん者を見て、其の過悪を出さん。
若実若不実。 若しは実にもあれ、若しは不実にもあれ、
此人現世。得白癩病。 此の人は現世に、白癩の病を得ん。
607
若有軽笑之者。当世世。 若し之を軽笑すること有らん者は、
牙歯疎欠。醜脣平鼻。 当に世世に、牙歯疎き欠け、醜脣平鼻、
手脚繚戻。眼目角睞。身体臭穢。 手脚繚戻し、眼目角?、身体臭穢にして、
悪瘡膿血。水腹短気。諸悪重病。 悪瘡膿血、水腹短気、諸の悪重病あるべし。
是故普賢。若見受持。是経典者。 是の故に普賢、若し是の経典を受持せん者を見ては、
当起遠迎。当如敬仏。 当に起って遠く迎うべきこと、当に仏を敬うが如くすべし。
説是普賢。勧発品時。 是の普賢勧発品を説きたもう時、
恒河沙等。無量無辺菩薩。 恒河沙等の無量無辺の菩薩、
得百千万億。旋陀羅尼。 百千万億旋陀羅尼を得、
三千大千世界。微塵等。諸菩薩。 三千大千世界微塵等の諸の菩薩、
具普賢道。 普賢の道を具しぬ。
仏説是経時。 仏是の経を説きたもう時、
普賢等。諸菩薩。舎利弗等。諸声聞。 普賢等の諸の菩薩、舎利弗等の諸の声聞、
及諸天龍。人非人等。一切大会。 及び諸の天・龍の、人非人等の一切の大会、
皆大歓喜。受持仏語。作礼而去。 皆大いに歓喜し、仏語を受持して、礼を作して去りにき。