522
爾時宿王華菩薩。白仏言。 爾の時に宿王華菩薩、仏に白して言さく、
世尊。薬王菩薩。云何遊於。裟婆世界。 世尊、薬王菩薩は、云何にしてか娑婆世界に遊ぶ。
世尊。是薬王菩薩。 世尊、是の薬王菩薩は、
有若干百千万億。那由他。難行苦行。 若干百千万億那由他の難行苦行有らん。
善哉世尊。願少解説。 善哉、世尊、願わくは少し解説したまえ。
諸天。龍神。夜叉。乾闥婆。阿修羅。 諸の天、龍神、夜叉、乾闥婆、阿修羅、
迦楼羅。緊那羅。摩睺羅伽。人非人等。 迦楼羅、緊那羅、摩?羅伽の人非人等、
又他国土。諸来菩薩。 又他の国土より諸の来れる菩薩、
及此声聞衆。聞皆歓喜。 及び此の声聞衆、聞いて皆歓喜せん。
爾時仏告。宿王華菩薩。 爾の時に仏、宿王華菩薩に告げたまわく、
523
乃往過去。無量恒河沙劫。有仏。 乃往過去、無量恒河沙劫に仏有しき。
号日月浄明徳如来。応供。正遍知。 日月浄明徳如来・応供・正遍知・
明行足。善逝。世間解。無上士。 明行足・善逝・世間解・無上士・
調御丈夫。天人師。仏世尊。 調御丈夫・天人師・仏世尊と号けたてまつる。
其仏有八十億。大菩薩摩訶薩。 其の仏に八十億の大菩薩摩訶薩、
七十二恒河沙。大声聞衆。 七十二恒河沙の大声聞衆有り。
仏寿四万二千劫。菩薩寿命亦等。 仏の寿は四万二千劫、菩薩の寿命も亦等し。
彼国無有女人。地獄。餓鬼。畜生。 彼の国には、女人、地獄、餓鬼、畜生、
阿修羅等。及以諸難。 阿修羅等、及以諸難有ること無なし。
地平如掌。瑠璃所成。 地の平かなること、掌の如くにして、瑠璃の所定なり。
宝樹荘厳。宝帳覆上。垂宝華幡。 宝樹荘厳し、宝帳上に覆い、宝の華幡を垂れ、
宝瓶香炉。周遍国界。 宝瓶、香炉、国界に周遍せり。
七宝為台。一樹一台。 七宝を台と為して、一樹に一台あり。
524
其樹去台。尽一箭道。 其の樹、台を去ること一箭道を尽せり。
此諸宝樹。皆有菩薩声聞。 此の諸の宝樹に、皆、菩薩、声聞有って、
而坐其下。諸宝台上。 其の下に坐せり。諸の宝台の上に、
各有百億諸天。作天伎楽。 各百億の諸天有って、天の伎楽を作し、
歌歎於仏。以為供養。 仏を歌歎して、以て供養を為す。
爾時彼仏。為一切衆生憙見菩薩。 爾の時に彼の仏、 一切衆生憙見菩薩、
及衆菩薩。諸声聞衆。説法華経。 及び衆の菩薩、諸の声聞衆の為に法華経を説きたもう。
是一切衆生憙見菩薩。楽習苦行。 是の一切衆生憙見菩薩、楽って苦行を習い、
於日月浄明徳仏法中。精進経行。 日月浄明徳仏の法の中に於て、精進経行して、
一心求仏。満万二千歳已。 一心に仏を求むること、万二千歳を満て已って、
得現一切色身三昧。 現一切色身三昧を得。
得此三昧已。心大歓喜。 此の三昧を得已って、心大いに歓喜して、
即作念言。 即ち念言を作さく、
我得現一切色身三昧。 我現一切色身三昧を得たる、
皆是得聞。法華経力。 皆是れ法華経を聞くことを得る力なり。
我今当供養。日月浄明徳仏。及法華経。 我今、当に日月浄明徳仏、及び法華経を供養すべし。
525
即時入是三昧。於虚空中。 即時に是の三昧に入って、虚空の中に於て、
雨曼陀羅華。摩訶曼陀羅華。 曼陀羅華、摩訶曼陀羅華、
細抹堅黒栴檀。満虚空中。 細抹堅黒の栴檀を雨らし、虚空の中に満てて、
如雲而下。又雨海此岸。栴檀之香。 雲の如くにして下し、又海此岸の栴檀の香を雨らす。
此香六銖。価直娑婆世界。以供養仏。 此の香の六銖、価直裟婆世界なり、以て仏に供養す。
作是供養已。従三昧起。 是の供養を作し已って、三昧より起って、
而自念言。 自ら念言すらく、
我雖以神力。供養於仏。 我、神力を以て仏を供養すと雖も、
不如以身供養。 身を以て供養せんには如かじ。
即服諸香。栴檀薫陸。兜楼婆。畢力迦。 即ち諸の香、栴檀、薫陸、兜楼婆、畢力迦、
沈水。膠香。又飲瞻蔔。諸華香油。 沈水、膠香を服し、又瞻蔔、諸の華香油を飲むこと、
満千二百歳已。香油塗身。 千二百歳を満じ已って、香油を身に塗り、
於日月浄明徳仏前。以天宝衣。 日月浄明徳仏の前に於て、天の宝衣を以て
而自纏身已。潅諸香油。 自ら身に纏い已って、諸の香油を潅ぎ、
526
以神通力願。而自燃身。 神通力の願を以て、自ら身を燃して、
光明遍照。八十億恒河沙世界。 光明遍く八十億恒河沙の世界を照す。
其中諸仏。同時讃言。 其の中の諸仏、同時に讃めて言わく、
善哉善哉。善男子。是真精進。 善哉善哉、善男子、是れ真の精進なり。
是名真法。供養如来。 是を真の法をもって如来を供養すと名づく。
若以華香瓔珞。焼香抹香塗香。 若し華香、瓔珞、焼香、抹香、塗香、
天繪幡蓋。及海此岸。栴檀之香。 天繪、幡蓋、及び海此岸の栴檀の香、
如是等種種諸物供養。 是の如き等の種種の諸物を以て供養すとも、
所不能及。 及ぶこと能わざる所なり。
仮使国城。妻子布施。 仮使、国城、妻子をもって布施すとも、
亦所不及。 亦及ばざる所なり。
善男子。是名第一之施。 善男子、是を第一の施と名づく。
於諸施中。最尊最上。 諸の施の中に於て、最尊最上なり。
以法供養。諸如来故。 法を以て、諸の如来を供養するが故に。
作是語已。而各黙然。 是の語を作し已って、各黙然したもう。
其身火燃。千二百歳。 其の身の火、燃ゆること千二百歳、
過是已後。其身乃尽。 是を過ぎ已って後、其の身乃ち尽きぬ。
527
一切衆生憙見菩薩。作如是法供養已。 一切衆生憙見菩薩、是の如き法の供養を作し已って、
命終之後。復生目月浄明徳仏国中。 命終の後に、復日月浄明徳仏の国の中に生じて、
於浄徳王家。結跏趺坐。忽然化生。 浄徳王の家に於て、結跏趺坐して、忽然に化生し、
即為其父。而説偈言 即ち其の父の為に、而も偈を説いて言さく、
大王今当知 我経行彼処 大王今当に知るべし 我彼の処に経行して
即時得一切 現諸身三昧 即時に一切 現諸身三昧を得
勤行大精進 捨所愛之身 大精進を勤行して 所愛の身を捨てにき
説是偈已。而白父言。 是の偈を説き已って、父に白して言さく、
日月浄明徳仏。今故現在。 日月浄明徳仏、今故現に在す。
我先供養仏已。得解一切衆生。 我先に仏を供養し已って、解一切衆生
語言陀羅尼。 語言陀羅尼を得、
復聞是法華経。八百千万億那由他。 復、是の法華経の八百千万億那由他・
甄迦羅。頻婆羅。阿閦婆等偈。 甄迦羅・頻婆羅・阿閦婆等の偈を聞けり。
528
大王。我今当還。供養此仏。 大王、我今、当に還って此の仏を供養すべし。
白已。即坐七宝之台。 白し已って、即ち七宝の台に坐し、
上昇虚空。高七多羅樹。 虚空に上昇ること高さ七多羅樹にして、
往到仏所。頭面礼足。 仏所に往到し、頭面に足を礼し、
合十指爪。以偈讃仏 十の指爪を合せて、偈を以て仏を讃めたてまつる、
容顔甚奇妙 光明照十方 容顔甚だ奇妙にして 光明十方を照したもう
我適曽供養 今復還親近 我適曽供養し 今復還って親近したてまつる
爾時一切衆生憙見菩薩。 爾の時に一切衆生憙見菩薩、
説是偈已。而白仏言。 是の偈を説き已って、仏に白して言さく、
世尊。世尊猶故在世。 世尊、世尊猶故世に在す。
爾時日月浄明徳仏。 爾の時に日月浄明徳仏、
告一切衆生憙見菩薩。 一切衆生憙見菩薩に告げたまわく、
善男子。我涅槃時到。滅尽時至。 善男子、我涅槃の時到り、滅尽の時至りぬ。
汝可安施牀座。 汝牀座を安施すべし。
我於今夜。当般涅槃。 我今夜に於て、当に般涅槃すべし。
又勅一切衆生憙見菩薩。 又、 一切衆生憙見菩薩に勅したまわく、
529
善男子。我以仏法。嘱累於汝。 男子、我仏法を以て汝に嘱累す。
及諸菩薩大弟子。 善及び諸の菩薩、大弟子、、
并阿耨多羅三藐三菩提法。 并びに阿耨多羅三藐三菩提の法
亦以三千大千七宝世界。 亦三千大千の七宝の世界、
諸宝樹宝台。及給侍諸天。悉付於汝。 諸の宝樹、宝台、及び給侍の諸天を以て、悉く汝に付す。
我滅度後。所有舎利。亦付嘱汝。 我が滅度の後、所有の舎利、亦汝に付嘱す。
当令流布。広設供養。 当に流布せしめ、広く供養を設くべし。
応起若干千塔。 応に若干千の塔を起つべし。
如是日月浄明徳仏。 是の如く日月浄明徳仏、
勅一切衆生憙見菩薩已。 一切衆生憙見菩薩に勅し已って、
於夜後分。入於涅槃。 夜の後分に於て涅槃に入りたまいぬ。
爾時一切衆生憙見菩薩。 爾の時に一切衆生憙見菩薩、
見仏滅度。悲感懊悩。恋慕於仏。 仏の滅度を見て、悲感懊悩して、仏を恋慕したてまつり、
即以海此岸。栴檀為積。 即ち海此岸の栴檀を以て積と為して、
供養仏身。而以焼之。 仏身を供養して、以て之を焼きたてまつる。
火滅已後。収取舎利。 火滅え已って後、舎利を収取し、
530
作八万四千宝瓶。 八万四千の宝瓶を作って、
以起八万四千塔。高三世界。 以て八万四千の塔を起たつること、三世界より高く、
表刹荘厳。垂諸幡蓋。懸衆宝鈴。 表刹荘厳して、諸の幡蓋を垂れ、衆の宝鈴を懸けたり。
爾時一切衆生憙見菩薩。復自念言。 爾の時に一切衆生憙見菩薩、復自ら念言すらく、
我雖作是供養。心猶未足。 我是の供養を作すと雖も、心猶未だ足らず。
我今当更。供養舎利。 我今、当に更に舎利を供養すべし。
便語諸菩薩大弟子。 便ち諸の菩薩、大弟子、
及天。龍。夜叉等。一切大衆。 及び天、龍、夜叉等の一切の大衆に語らく、
汝等当一心念。 汝等当に一心に念ずべし。
我今供養。日月浄明徳仏舎利。 我今、日月浄明徳仏の舎利を供養せん。
作是語已。即於八万四千塔前。 是の語を作し已って、即ち八万四千の塔の前に於て、
燃百福荘厳臂。七万二千歳。而以供養。 百福荘厳の臂を燃すこと、七万二千歳にして、以て供養す。
令無数求声聞衆。無量阿僧祇人。 無数の声聞を求むる衆、無量阿僧祇の人をして、
発阿耨多羅三藐三菩提心。 阿耨多羅三藐三菩提の心を発さしめ、
531
皆使得住。現一切色身三昧。 皆、現一切色身三昧に住することを得せしむ。
爾時諸菩薩。天人阿修羅等。 爾の時に諸の菩薩、天、人、阿修羅等、
見其無臂。憂悩悲哀。而作是言。 其の臂無きを見て、憂悩悲哀して、是の言を作さく、
此一切衆生憙見菩薩。 此の一切衆生憙見菩薩は、
是我等師。教化我者。 是れ我等が師、我を教化したもう者なり。
而今焼臂。身不具足。 而るに今、臂を焼いて、身具足したまわず。
于時一切衆生憙見菩薩。 時に一切衆生憙見菩薩、
於大衆中。立此誓言。 大衆の中に於て、此の誓言を立つ。
我捨両臂。必当得仏。金色之身。 我両の臂を捨てて、必ず当に仏の金色の身を得べし。
若実不虚。令我両臂。 若し実にして虚しからずんば、我が両の臂をして、
還復如故。 還復すること故の如くならしめん。
作是誓已。自然還復。 是の誓を作し已って、自然に還復しぬ。
由斯菩薩。福徳智慧。淳厚所致。 斯の菩薩の福徳智慧の、淳厚なるに由って致す所なり。
当爾之時。三千大千世界。六種震動。 爾の時に当って、三千大千世界六種に震動し、
天雨宝華。一切天人。 天より宝華を雨らして、一切の天、人、
得未曽有。 未曽有なることを得たり。
532
仏告宿王華菩薩。 仏、宿王華菩薩に告げたまわく、
於汝意云何。 汝が意に於て云何。
一切衆生憙見菩薩。豈異人乎。 一切衆生憙見菩薩は、豈、異人ならんや。
今薬王菩薩是也。 今の薬王菩薩是なり。
其所捨身布施。 其の身を捨てて布施する所、
如是無量。百千万億。那由他数。 是の如く無量百千万億那由他数なり。
宿王華。若有発心。 宿王華、若し発心して、
能燃手指。乃至足一指。 能く手の指、乃至足の一指を燃して、
欲得阿耨多羅三藐三菩提者。 阿耨多羅三藐三菩提を得んと欲すること有らん者は、
供養仏塔。勝以国城妻子。 仏塔に供養せよ。国城、妻子、
及三千大千国土。山林河池。 及び三千大千国土の山林、河池、
諸珍宝物。而供養者。 諸の珍宝物を以て供養せん者に勝らん。
若復有人。 若し復人有って、
以七宝満。三千大千世界。 七宝を以て三千大千世界に満てて、
供養於仏。及大菩薩。 仏、及び大菩薩、
辟支仏。阿羅漢。 辟支仏、阿羅漢に供養せん。
是人所得功徳。不如受持。此法華経。 是の人の所得の功徳も、此の法華経の、
乃至一四句偈。其福最多。 乃至一四句偈を受持する、其の福の最も多きには如かじ。
533
宿王華。譬如一切。 宿王華、譬えば一切の
川流江河。諸水之中。海為第一。 川流、江河の諸水の中に、海為れ第一なるが如く、
此法華経。亦復如是。 此の法華経も、亦復是の如し。
於諸如来。所説経中。最為深大。 諸の如来の所説の経の中に於て、最も為れ深大なり。
又如土山。黒山。小鉄囲山。大鉄山。 又、土山、黒山、小鉄囲山、大鉄囲山、
及十宝山。衆山之中。須弥山為第一。 及び十宝山の衆山の中に、須弥山為れ第一なるが如く、
此法華経。亦復如是。 此の法華経も、亦復是の如し。
於諸経中。最為其上。 諸経の中に於て、最も為れ其の上なり。
又如衆星之中。月天子。最為第一。 又、衆星の中に、月天子最も為れ第一なるが如く、
此法華経。亦復如是。 此の法華経も、亦復是の如し。
於千万億種。諸経法中。最為照明。 千万億種の諸の経法の中に於て、最も為れ照明なり。
又如日天子。能除諸闇。 又、日天子の、能く諸の闇を除くが如く、
此経亦復如是。能破一切。不善之闇。 此の経も亦復是の如し。能く一切の不善の闇を破す。
534
又如諸小王中。転輪聖王。最為第一。 又、諸の小王の中に、転輪聖王最も為れ第一なるが如く、
此経亦復如是。於衆経中。最為其尊。 衆経の中に於て、最も為れ其の尊なり。
又如帝釈。於三十三天中王。 又、帝釈の三十三天の中に於て王なるが如く、
此経亦復如是。諸経中王。 此の経も亦復是の如し。諸経の中の王なり。
又如大梵天王。一切衆生之父。 又、大梵天王の一切衆生の父なるが如く、
此経亦復如是。 此の経も亦復是の如し。
一切賢聖。学無学。 一切の賢聖、学無学、
及発菩薩心者之父。 及び菩薩の心を発す者の父なり。
又如一切。凡夫人中。須陀洹。 又、一切の凡夫人の中に、須陀洹、
斯陀含。阿那含。阿羅漢。 斯陀含、阿那含、阿羅漢、
辟支仏為第一。此経亦復如是。 辟支仏、為れ第一なるが如く、此の経も亦復是の如し。
一切如来所説。若菩薩所説。 一切の如来の所説、若しは菩薩の所説、
若声聞所説。諸経法中。最為第一。 若しは声聞の所説、諸の経法の中に最も為れ第一なり。
有能受持。是経典者。 能く是の経典を受持すること有らん者も、
亦復如是。於一切衆生中。亦為第一。 亦復是の如し。一切衆生の中に於て、亦為れ第一なり。
535
一切声聞。辟支仏中。菩薩為第一。 一切の声聞、辟支仏の中に、菩薩為れ第一なり。
此経亦復如是。 此の経も亦復是の如し。
於一切諸経法中。最為第一。 一切の諸の経法の中に於て、最も為れ第一なり。
如仏為諸法王。此経亦復如是。 仏は為れ諸法の王なるが如く、此の経も亦復是の如し。
諸経中王。 諸経の中の王なり。
宿王華。此経能救。一切衆生者。 宿王華、此の経は能く一切衆生を救いたもう者なり。
此経能令。一切衆生。離諸苦悩。 此の経は能く、 一切衆生をして、諸の苦悩を離れしめたもう。
此経能大饒益。一切衆生。 此の経は能く、大いに一切衆生を饒益して、
充満其願。 其の願を充満せしめたもう。
如清涼池。能満一切。諸渇乏者。 清涼の池の能く一切の諸の渇乏の者に満つるが如く、
如寒者得火。如裸者得衣。 寒き者の火を得たるが如く、裸なる者の衣を得たるが如く、
如商人得主。如子得母。 商人の主を得たるが如く、子の母を得たるが如く、
如渡得船。如病得医。 渡に船を得たるが如く、病に医を得たるが如く、
如暗得燈。如貧得宝。 暗に燈を得たるが如く、貧しきに宝を得たるが如く、
如民得王。如賈客得海。 民の王を得たるが如く、賈客の海を得たるが如く、
如炬除暗。此法華経。亦復如是。 炬の暗を除くが如く、此の法華経も亦復是の如し。
536
能令衆生。離一切苦。一切病痛。 能く衆生をして、一切の苦、一切の病痛を離れ、
能解一切。生死之縛。 能く一切の生死の縛を解かしめたもう。
若人得聞。此法華経。 若し人、此の法華経を聞くことを得て、
若自書。若教人書。 若しは自らも書き、若しは人をして書かしめん。
所得功徳。以仏智慧。籌量多少。 所得の功徳、仏の智慧を以て多少を籌量すとも、
不得其辺。若書是経巻。 其の辺を得じ。若し是の経巻を書いて、
華香瓔珞。焼香抹香塗香。 華香、瓔珞、焼香、抹香、塗香、
幡蓋衣服。種種之燈。蘇燈。油燈。 幡蓋、衣服、種種の燈、蘇燈、油燈、
諸香油燈。瞻蔔油燈。須曼那油燈。 諸の香油燈、瞻蔔油燈、須曼那油燈、
波羅睺羅油燈。婆利師迦油燈。 波羅睺羅油燈。婆利師迦油燈、
那婆摩利油燈供養。 那婆摩利油燈をもって供養せん。
所得功徳。亦復無量。 所得の功徳、亦復無量ならん。
宿王華。若有人。 宿王華、若し人有って、
聞是薬王菩薩本事品者。 是の薬王菩薩本事品を聞かん者は、
亦得無量無辺功徳。若有女人。 亦、無量無辺の功徳を得ん。若し女人有って、
537
聞是薬王菩薩本事品。能受持者。 是の薬王菩薩本事品を聞いて、能く受持せん者は、
尽是女身。後不復受。 是の女身を尽して、後に復受けじ。
若如来滅後。後五百歳中。 若し如来の滅後、後五百歳の中に、
若有女人。聞是経典。 若し女人有って、是の経典を聞いて、
如説修行。於此命終。 説の如く修行せば、此に於て命終して、
即往安楽世界。阿弥陀仏。 即ち安楽世界の阿弥陀仏の、
大菩薩衆。囲遶住処。 大菩薩衆の囲遶せる住処に往いて、
生蓮華中。宝座之上。 蓮華の中の宝座の上に生ぜん。
不復為貪欲所悩。亦復不為。 復、貪欲に悩まされじ。
瞋恚愚癡所悩。亦復不為。 亦復、瞋恚、愚癡に悩まされじ。
憍慢嫉妬。諸垢所悩。 亦復、憍慢、嫉妬、諸垢に悩まされじ。
得菩薩神通。無生法忍。 苦薩の神通、無生法忍を得ん。
得是忍已。眼根清浄。 是の忍を得已って、眼根清浄ならん。
以是清浄眼根。見七百万二千億。 是の清浄の眼根を以て、七百万二千億
那由他。恒河沙等。諸仏如来。 那由他恒河沙等の諸仏如来を見たてまつらん。
538
是時諸仏。遙共讃言。 是の時に諸仏、遙かに共に讃めて言わく、
善哉善哉。善男子。 善哉善哉、善男子、
汝能於釈迦牟尼仏法中。 汝能く釈迦牟尼仏の法の中に於て、
受持読誦。思惟是経。為他人説。 是の経を受持し、読誦し、思惟し、他人の為に説けり。
所得福徳。無量無辺。 所得の福徳、無量無辺なり。
火不能焼。水不能漂。 火も焼くこと能わず、水も漂わすこと能わじ。
汝之功徳。千仏共説。不能令尽。 汝の功徳は、千仏共に説きたもうとも尽さしむること能わじ。
汝今已能。破諸魔賊。壊生死軍。 汝今已に能く諸の魔賊を破し、生死の軍を壊し、
諸余怨敵。皆悉摧滅。 諸余の怨敵皆悉く摧滅せり。
善男子。百千諸仏。 善男子、百千の諸仏、
以神通力。共守護汝。 神通力を以て、共に汝を守護したもう。
於一切世間。天人之中。無如汝者。 一切世間の天、人の中に於て、汝に如く者無し。
唯除如来。其諸声聞。辟支仏。 唯如来を除いて、其の諸の声聞、辟支仏、
乃至菩薩。智慧禅定。無有与汝等者。 乃至菩薩の智慧、禅定も、汝と等しき者有ること無けん。
宿王華。此菩薩。 宿王華、此の菩薩は、
成就如是。功徳智慧之力。 是の如き功徳、智慧の力を成就せり。
539
若有人。聞是薬王菩薩本事品。 若し人有って、是の薬王菩薩本事品を聞いて、
能随喜讃善者。 能く随喜して善しと讃ぜば、
是人現世口中。常出青蓮華香。 是の人現世に、口の中より常に青蓮華の香を出し、
身毛孔中。常出牛頭栴檀之香。 身の毛孔の中より常に牛頭栴檀の香を出さん。
所得功徳。如上所説。 所得の功徳、上に説く所の如し。
是故宿王華。 是の故に宿王華、
以此薬王菩薩本事品。嘱累於汝。 此の薬王菩薩本事品を以て、汝に嘱累す。
我滅度後。後五百歳中。 我が滅度の後、後の五百歳の中に、
広宣流布。於閻浮提。無令断絶。 閻浮提に広宣流布して、断絶せしむること無けん。
悪魔。魔民。諸天。龍。夜叉。 悪魔、魔民、諸天、龍、夜叉、
鳩槃荼等。得其便也。 鳩槃荼等其の便を得ん。
宿王華。汝当以神通之力。守護是経。 宿王華、汝当に神通の力を以て、是の経を守護すべし。
所以者何。此経則為。 所以は何ん。此の経は則ち為れ、
閻浮提人。病之良薬。 閻浮提の人の病の良薬なり。
若人有病。得聞是経。 若し人病有らんに、是の経を聞きくことを得ば、
540
病即消滅。不老不死。 病即ち消滅して不老不死ならん。
宿王華。汝若見有。受持是経者。 宿王華、汝若し是の経を受持すること有らん者を見ては、
応以青蓮華。盛満抹香。供散其上。 応に青蓮華を以て、抹香を盛り満てて、其の上に供散すべし。
散已。作是念言。 散じ已って、是の念言を作すべし。
此人不久。必当取草。 此の人久しからずして、必ず当に草を取って、
坐於道場。破諸魔軍。 道場に坐して、諸の魔軍を破すべし。
当吹法螺。撃大法鼓。 当に法の螺を吹き、大法の鼓を撃って、
度脱一切衆生。老病死海。 一切衆生の老病死の海を度脱すべし。
是故求仏道者。 是の故に、仏道を求めん者、
見有受持是経典人。 是の経典を受持すること有らん人を見ては、
応当如是。生恭敬心。 応当に是の如く、恭敬の心を生ずべし。
説是薬王菩薩本事品時。 是の楽王菩薩本事品を説きたもう時、
八万四千菩薩。 八万四千の菩薩、
得解一切衆生語言陀羅尼。 解一切衆生語言陀羅尼を得たり。
多宝如来。於宝塔中。 多宝如来、宝塔の中に於て、
護宿王華菩薩言。 宿王華菩薩を讃めて言わく、
541
善哉善哉。宿王華。 善哉善哉、宿王華、
汝成就不可思議功徳。 汝不可思議の功徳を成就して、
乃能問。釈迦牟尼仏。如此之事。 乃ち能く釈迦牟尼仏に、此の如きの事を問いたてまつりて、
利益無量。一切衆生。 無量の一切衆生を利益す。