妙法蓮華経嘱累品第二十二

518
爾時釈迦牟尼仏。従法座起。      爾の時に釈迦牟尼仏、法座より起って、
現大神力。以右手摩。         大神力を現じたもう。右の手を以て、
無量菩薩摩訶薩頂。而作是言。     無量の菩薩摩訶薩の頂を摩でて、是の言を作したまわく、
我於無量。百千万億。阿僧祇劫。     我、無量百千万億阿僧祇劫に於て、
修習是難得。阿耨多羅三藐三菩提法。   是の得難き阿耨多羅三藐三菩提の法を修習せり。
今以付嘱汝等。             今以て汝等に付嘱す。
汝等応当一心。流布此法。        汝等、応当に一心に此の法を流布して、
広令増益。               広く増益せしむべし。
如是三摩。諸菩薩摩訶薩頂。      是の如く三たび、諸の菩薩摩訶薩の頂を摩でて、  
而作是言。              是の言を作したまわく、

519
我於無量。百千万億。阿僧祇劫。     我、無量百千万億阿僧祇劫に於て、
修習是難得。阿耨多羅三藐三菩提法。   是の得難き阿耨多羅三藐三菩提の法を修習せり。
今以付嘱汝等。汝等当受持読誦。     今以て汝等に付嘱す。汝等当に受持し読誦し、
広宣此法。令一切衆生。         広く此の法を宣べて、 一切衆生をして、
普得聞知。               普く聞知することを得せしむべし。
所以者何。如来有大慈悲。        所以は何ん。如来は大慈悲有って、  
無諸慳恡。亦無所畏。能与衆生。     諸の慳恡無く、亦畏るる所無くして、能く衆生に、  
仏之智慧。如来智慧。自然智慧。     仏の智慧、如来の智慧、自然の智慧を与う。
如来是一切衆生。之大施主。       如来は是れ一切衆生の大施主なり。    
汝等亦応随学。如来之法。        汝等亦、応に随って如来の法を学すべし。 
勿生慳恡。               慳恡を生ずること勿れ。
於未来世。若有善男子。善女人。     未来世に於て、若し善男子、善女人有って、
信如来智慧者。当為演説。        如来の智慧を信ぜん者には、当に為に
此法華経。使得聞知。          此の法華経を演説して、聞知ちすることを得せしむべし。
為令其人。得仏慧故。          其の人をして、仏慧を得せしめんが為の故なり。

520
若有衆生。不信受者。          若し衆生有って、信受せざらん者には、
当於如来。余深法中。          当に如来の余の深法の中に於て、
示教利喜。汝等若能如是。        示教利喜すべし。汝等、若し能く是の如くせば、
則為已報。諸仏之恩。          則ち為れ、已に諸仏の恩を報ずるなり。
時諸菩薩摩訶薩。           時に諸の菩薩摩訶薩、
聞仏作是説已。            仏の是の説を作したもうを聞き已って、
皆大歓喜。遍満其身。         皆大いに歓喜し、其の身に遍満して、
益加恭敬。曲躬低頭。         益恭敬を加え、躬を曲げ頭を低れ、
合掌向仏。倶発声言。         合掌して仏に向いたてまつりて、倶に声を発して言さく、 
如世尊勅。当具奉行。          世尊の勅の如く、当に具さに奉行すべし。
唯然。世尊。願不有慮。         唯然なり。世尊、願わくは慮したもうこと有らざれ。 
諸菩薩摩訶薩衆。如是三反。      諸の菩薩摩訶薩衆、是の如く三反、
倶発声言。              倶に声を発して言さく、
如世尊勅。当具奉行。          世尊の勅の如く、当に具さに奉行すべし。
唯然。世尊。願不有慮。         倶に声を発して言さく、  
爾時釈迦牟尼仏。令十方来。      爾の時に釈迦牟尼仏、十方より来りたまえる
諸分身仏。各還本土。         諸の分身の仏をして、各本上に還らしめんとして、
而作是言。              是の言を作したまわく、
諸仏各随所安。             諸仏は各、所安に随いたまえ。  

521
多宝仏塔。還可如故。          多宝仏の塔、還って故の如くしたもうべし。
説是語時。十方無量。分身諸仏。    是の語を説きたもう時、十方無量の分身の諸仏の、
坐宝樹下。師子座上者。及多宝仏。   宝樹下の師子座上に坐したまえる者、及び多宝仏、
并上行等。無辺阿僧祇。菩薩大衆。   并びに上行等の無辺阿僧祇の菩薩大衆、
舎利弗等。声聞四衆。         舎利弗等の声聞四衆、  
及一切世間。天人阿修羅等。      及び一切世間の天、人、阿修羅等、
聞仏所説。皆大歓喜。         仏の所説を聞ききたてまつりて、皆大いに歓喜す。