464
爾時弥勒菩薩摩訶薩。白仏言。 爾の時に弥勅菩薩摩訶薩、仏に白して言さく、
世尊。若有善男子。善女人。 世尊、若し善男子、善女人有って、
聞是法華経。随喜者。 是の法華経を聞きたてまっりて随喜せん者は、
得幾所福。 幾所の福をか得ん。
而説偈言 而も偈を説いて言さく、
世尊滅度後 其有聞是経 世尊滅度の後に 其れ是の経を聞くこと有って
若能随喜者 為得幾所得 若し能く随喜せん者は 幾所の福をか得為き
爾時仏告。弥勒菩薩摩訶薩。 爾の時に仏、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、
阿逸多。如来滅後。 阿逸多、如来の滅後に、
若比丘。比丘尼。優婆塞。 若し比丘、比丘尼、優婆塞、
465
優婆夷。及余智者。若長若幼。 優婆夷及び余の智者、若しは長、若しは幼、
聞是経。随喜已。 是の経を聞いて、随喜し已って、
従法会出。至於余処。 法会より出でて余処に至らん。
若在僧坊。若空閑地。 若しは僧坊に在り、若しは空閑の地、
若城邑巷陌。聚落田里。 若しは城邑巷陌、聚落田里にして、
如其所聞。為父母宗親。 其の所聞の如く、父母宗親、
善友知識。随力演説。 善友知識の為に、力に随って演説せん。
是諸人等。聞已随喜。 是の諸人等は、聞き已って随喜して、
復行転教。余人聞已。 復行いて転教せん。余の人聞き已って、
亦随喜転教。 亦随喜して転教せん。
如是展転。至第五十。 是の如く展転して、第五十に至らん。
阿逸多。其第五十。善男子。 阿逸多、其の第五十の善男子、
善女人。随喜功徳。 善女人の随喜の功徳を、
我今説之。如当善聴。 我今、之を説とかん。汝当に善く聴くべし。
若四百万億。阿僧祇世界。 若し四百万億阿僧祇の世界の六趣、
六趣四生衆生。卵生。胎生。湿生。 四生の衆生は、卵生、胎生、湿生、
化生。若有形。無形。有想。無想。 化生、若しは有形、無形、有想、無想、
非有想。非無想。 非有想、非無想、
466
無足。二足。四足。多足。 無足、二足、四足、多足、
如是等在。衆生数者。 是の如き等の衆生数に在らん者に、
有人求福。随其所欲。 人有って福を求めて、其の所欲に随って、
娯楽之具。皆給与之。 娯楽の具、皆之に給与せん。
一一衆生。与満閻浮提。 一一の衆生に閣浮提に満らん
金。銀。瑠璃。硨磲。碼碯。珊瑚。 金、銀、瑠璃、硨磲、碼碯、珊瑚、
琥珀。諸妙珍宝。及象馬車乗。 琥珀、諸の妙なる珍費、及び象馬の車乗、
七宝所成。宮殿楼閣等。 七費所成の宮殿・楼閣等を与えん。
是大施主。如是布施。 是の大施主、是の如く布施すること、
満八十年已。而作是念。 八十年を満て己って、是の念を作さく、
我已施衆生。娯楽之具。随意所欲。 我己に衆生に、娯楽の具を施すこと意の所欲に随う。
然此衆生。皆已衰老。 然るに此の衆生、皆己に衰老して、年八十を過ぎて、
年過八十髪白面皺。将死不久。 髪自く、面級みて、将に死せんこと久しからじ。
我当以仏法。而訓導之。 我営に仏法を以て、之を訓導すべし。
即集此衆生。宣布法化。 即ち此の衆生を集めて、宣布法化し、
示教利喜。一時皆得。須陀洹道。 示教利喜して、一時に皆須陀洹道、
467
斯陀含道。阿那含道。阿羅漢道。 斯陀含道、阿那含道、阿羅漢道を得、
尽諸有漏。於深禅定。 諸の有漏を尽し、深禅定に於て、
皆得自在。具八解脱。 皆自在を得、八解脱を具せしめん。
於汝意云何。是大施主。 汝が意に於て云何。是の大施主の
所得功徳。寧為多不。 所得の功徳、寧ろ多しと為んや不や。
弥勒白仏言。世尊。 弥勒、仏に自して言さく、
是人功徳甚多。無量無辺。 世尊、是の人の功徳甚だ多くして、無量無辺なり。
若是施主。但施衆生。 若し是の施主、但衆生に一切の楽具を施さんすら、
一切楽具。功徳無量。 功徳無量ならん。
何況令得。阿羅漢果。 何に況んや阿羅漢果を得せしめんをや。
仏告弥勒。 仏、弥勒に告げたまわく、
我今分明語汝。是人以一切楽具。 我今分明に汝に語る。是の人、一切の楽具を以て、
施於四百万億。阿僧祇世界。六趣衆生。 四百万億阿僧祇の世界の、六趣の衆生に施し、
又令得阿羅漢果。所得功徳。 又阿羅漢果を得せしめん。所得の功徳は、
不如。是第五十人。 是の第五十の人の法華経の一偈を聞いて、
聞法華経一偈。随喜功徳。 随喜せん功徳には如かじ。
百分。千分。百十万億分。不及其一。 百分、千分、百千万億分にして、其の一にも及ばじ。
468
乃至算数譬喩。所不能知。 乃至算数譬喩も知ること能わざる所なり。
阿逸多。如是第五十人。 阿逸多、是の如く第五十の人の展転して、
展転聞法華経。随喜功徳。 法華経を聞きいて随喜せん功徳、
尚無量無辺。阿僧祇。 尚無量無辺阿僧祇なり。
何況最初。於会中聞。而随喜者。 何に況んや、最初会中に於て、聞いて随喜せん者をや。
其福復勝。無量無辺。阿僧祇。 其の福復勝れたること、無量無辺阿僧祇にして、
不可得比。 比ぶること得べからず。
又阿逸多。若人為是経故。 又阿逸多、若し人、是の経の為の故に、
往詣僧坊。若坐。若立。須臾聴受。 僧坊に往詣して、若しは坐し、若しは立ち、須臾も聴受せん。
縁是功徳。転身所生。 是の功徳に縁って、身を転じて生れん所には、
得好上妙。象馬車乗。 好き上妙の象馬の車乗、
珍宝輦輿。及乗天宮。 珍宝の輦輿を得、及び天宮に乗ぜん。
若復有人。於講法処坐。 若し復人有って、講法の処に於て坐せん。
更有人来。勧令坐聴。 更に人の来ること有らんに、勧めて坐して聴かしめ、
若分座令坐。是人功徳。 若しは座を分って坐せしめん。是の人の功徳、
469
転身得帝釈坐処。若梵天王坐処。 身を転じて帝釈の坐処、若しは梵天王の坐処、
若転輪聖王。所坐之処。 若しは転輪聖王の所坐の処を得ん。
阿逸多。若復有人。語余人言。 阿逸多、若し復人有って余人に語って言わく、
有経名法華。可共往聴。 経有り。法華と名づけたてまつる。共に往いて聴くべし。
即受其教。乃至須臾間聞。 即ち其の教を受けて、乃至須臾の間も聞かん。
是人功徳。転身得与。陀羅尼菩薩。 是の人の功徳は、身を転じて陀羅尼菩薩と
共生一処。利根智慧。 共に一処に生ずることを得ん。利根にして智慧あらん。
百千万世。終不瘖瘂。 百千万世に、終に瘖瘂ならず。
口気不臭。舌常無病。 口の気臭からず。舌に常に病無く、
口亦無病。歯不垢黒。 口にも亦病無けん。歯は垢黒ならず、
不黄不疎。亦不欠落。 黄ならず疎かず、亦欠落せず、
不差不曲。脣不下垂。 差わず曲らず。唇下垂せず、
亦不褰縮。不麁渋。 亦褰縮ならず、麁渋ならず、
不瘡胗。亦不欠壊。 瘡胗ならず、亦欠壊せず、
亦不喎邪。不厚不大。 亦喎邪ならず、厚からず大ならず、
亦不梨黒。無諸可悪。 亦梨黒ならず、諸の悪むべきこと無けん。
鼻不匾㔸。亦不曲戻。 鼻匾㔸ならず、亦曲戻ならず。
470
面色不黒。亦不狭長。 面色黒からず、亦狭長ならず、
亦不窊曲。無有一切。不可憙相。 亦窊曲ならず、 一切の憙うべからざる相有ること無けん。
脣舌牙歯。悉皆厳好。 唇舌牙歯、悉く皆厳好ならん。
鼻修高直。面貌円満。 鼻修く高直にして、面貌園満し、
眉高而長。額広平正。 眉高くして長く、額広く平正にして、
人相具足。世世所生。 人相具足せん。世世に生れん所には、
見仏聞法。信受教誨。 仏を見たてまつり法を聞いて、教誨を信受せん。
阿逸多。汝且観是。 阿逸多、汝且く是を観ぜよ。
観於一人。令往聴法。功徳如此。 一人に勧めて、往いて法を聴かしむる功徳此の如し。
何況一心。聴説読誦。而於大衆。 何に況んや、一心に聴き、説き、読誦し、而も大衆に於て、
為人分別。如説修行。 人の為に分別し、説の如く修行せんをや。
爾時世尊。欲重宣此義。 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、
而説偈言 偈を説いて言わく、
若人於法会 得聞是経典 若し人法会に於て 是の経典を聞くことを得て
乃至於一偈 随喜為他説 乃至一偈に於ても 随喜して他の為に説かん
471
如是展転教 至於第五十 是の如く展転して教うること 第五十に至らん
最後人獲福 今当分別之 最後の人の福を獲んこと 今当に之を分別すべし
如有大施主 供給無量衆 大施主有って 無小量の衆に供給すること
具満八十歳 随意之所欲 具に八十歳を満てて 意の所欲に随わんが如し
見彼衰老相 髪白而面皺 彼の衰老の相の 髪白くして面皺み
歯疎形枯竭 念其死不久 歯疎き形枯竭せるを見て 其の死せんこと久しからじ
我今応当教 令得於道果 我今応当に教えて 道果を得せしむべしと念じて
即為方便説 涅槃真実法 即ち為に方便して 涅槃真実の法を説かん
世皆不牢固 如水沫泡焔 世は皆牢固ならざること 水沫泡焔の如し
汝等咸応当 疾生厭離心 汝等咸く応当に 疾く厭離の心を生ずべし
諸人聞是法 皆得阿羅漢 諸人是の法を聞いて 皆阿羅漢を得
具足六神通 三明八解脱 六神通 三明八解脱を具足せん
472
最後第五十 聞一偈随喜 最後第五十の 一偈を聞いて随喜せん
是人福勝彼 不可為譬喩 是の人の福彼に勝れたること 譬喩を為すべからず
如是展転聞 其福尚無量 是の如く展転して聞く 其の福尚無量なり
何況於法会 初聞随喜者 何に況んや法会に於て 初めて聞いて随喜せん者をや
若有勧一人 将引聴法華 若し一人を勧めて 将引して法華を聴かしむること有って
言此経深妙 千万劫難遇 言わく此の経は深妙なり 千万劫にも遇い難しと
即受教往聴 乃至須臾聞 即ち教を受けて往いて聴くこと 乃至須臾も聞かん
斯人之福報 今当分別説 斯の人の福報 今当に分別し説くべし
世世無口患 歯不疎黄黒 世世に口の患無く 歯疎き黄黒ならず
脣不厚褰欠 無有可悪相 脣厚く褰欠ならず 悪むべき相有ること無けん
舌不乾黒短 鼻高修且直 舌乾き黒短ならず 鼻高く修く且直からん
額広而平正 面目悉端厳 額広くして平正に 面目悉く端厳にして
473
為人所憙見 口気無臭穢 人に見んと憙われん 口の気臭穢無くして
優鉢華之香 常従其口出 優鉢華の香 常に其の口より出でん
若故詣僧坊 欲聴法華経 若し故に僧坊に詣いて 法華経を聴かんと欲して
須臾聞歓喜 今当説其福 須臾も聞いて歓喜せん 今当に其の福を説くべし
後生天人中 得妙象馬車 後に天人の中に生れて 妙なる象馬車
珍宝之輦輿 及乗天宮殿 珍宝の輦輿を得 及び天の宮殿に乗ぜん
若於講法処 勧人坐聴経 若し講法の処に於て 人を勧めて坐して経を聴かしめん
是福因縁得 釈梵転輪座 是の福の因縁をもって 釈梵転輪の座を得ん ′
何況一心聴 解説其義趣 何に況んや一心に聴き 其の義趣を解説し
如説而修行 其福不可限 説の如く修行せんをや 其の福限るべからず