444
爾時大会。聞仏説。 爾の時に大会、仏の、
寿命劫数。長遠如是。 寿命の劫数、長遠なること是の如くなるを、説きたもうを聞いて、
無量無辺。阿僧祇衆生。得大饒益。 無量無辺阿僧祇の衆生、大饒益を得つ。
於時世尊。告弥勒菩薩摩訶薩。 時に世尊、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、
阿逸多。我説是如来。寿命長遠時。 阿逸多、我、是の如来の寿命長遠なるを説く時、
六百八十万億。那由他。恒河沙衆生。 六百八十万億那由他恒河沙の衆生、
得無生法忍。復有千倍。菩薩摩訶薩。 無生法忍を得。復、千倍の菩薩摩訶薩有って、
得聞持陀羅尼門。復有一世界。 聞持陀羅尼門を得。復、一世界
微塵数菩薩摩訶薩。得楽説無礙弁才。 微塵数の菩薩摩訶薩有って、楽説無礙弁才を得。
445
復有一世界。微塵数菩薩摩訶薩。 復、一世界微塵数の菩薩摩訶薩有って、
得百千万億。無量旋陀羅尼。 百千万億無量の旋陀羅尼を得。
復有三千大千世界。微塵数菩薩摩訶薩。 復、三千大千世界微塵数の菩薩摩訶薩有って、
能転不退法輪。 能く不退の法輪を転ず。
復有二千中国土。微塵数菩薩摩訶薩。 復、二千中国土微塵数の菩薩摩訶薩有って、
能転清浄法輪。 能く清浄の法輪を転ず。
復有小千国土。微塵数菩薩摩訶薩。 復、小千国土微塵数の菩薩摩訶薩有って、
八生当得。阿耨多羅三藐三菩提。 八生に、当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。
復有四四天下。微塵数菩薩摩訶薩。 復、四四天下微塵数の菩薩摩訶薩有って、
四生当得。阿耨多羅三藐三菩提。 四生に、当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。
復有三四天下。微塵数菩薩摩訶薩。 復、三四天下微塵数の菩薩摩訶薩有って、
三生当得。阿耨多羅三藐三菩提。 三生に、当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。
復有二四天下。微塵数菩薩摩訶薩。 復、二四天下微塵数の菩薩摩訶薩有って、
二生当得。阿耨多羅三藐三菩提。 二生に、当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。
446
復有一四天下。微塵数菩薩摩訶薩。 復、一四天下微塵数の菩薩摩訶薩有って、
一生当得。阿耨多羅三藐三菩提。 一生に、当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。
復有八世界。微塵数衆生。 復、八世界微塵数の衆生有って、
皆発阿耨多羅三藐三菩提心。 皆、阿耨多羅三藐三菩提の心を発しつ。
仏説是諸菩薩摩訶薩。得大法利時。 仏、是の諸の菩薩摩訶薩の、大法利を得ることを説きたもう時、
於虚空中。雨曼陀羅華。摩訶曼陀羅華。 虚空の中より、曼陀羅華、摩訶曼陀羅華を雨らして、
以散無量。百千万億。宝樹下。 以て無量百千万億の宝樹下の、
師子座上諸仏。并散七宝塔中。 師子座上の諸仏に散じ、并びに七宝塔中の、
師子座上。釈迦牟尼仏。 師子座上の釈迦牟尼仏、
及久滅度。多宝如来。 及び久滅度の多宝如来に散じ、
亦散一切。諸大菩薩。及四部衆。 亦、一切の諸の大菩薩、及び四部の衆に散ず。
又雨細抹。栴檀沈水香等。 又、細抹の栴檀、沈水香等を雨らし、
於虚空中。天鼓自鳴。妙声深遠。 虚空の中に於て、天鼓自ら鳴って、妙声深遠なり。
447
又雨千種天衣。垂諸瓔珞。真珠瓔珞。 又、千種の天衣を雨らし、諸の瓔珞、真珠瓔珞、
摩尼珠瓔珞。如意珠瓔珞。遍於九方。 摩尼珠瓔珞、如意珠瓔珞を垂れて、九方に遍ぜり。
衆宝香炉。焼無価香。自然周至。 衆宝の香炉に、無価の香を焼いて、自然に周く至って
供養大会。一一仏上。有諸菩薩。 大会に供養す。一一の仏の上に、諸の菩薩有って、
執持幡蓋。次第而上。至于梵天。 幡蓋を執持して、次第に上って梵天に至る。
是諸菩薩。以妙音声。歌無量頌。 是の諸の菩薩、妙なる音声を以て、無量の頌を歌いて、
讃歎諸仏。 諸仏を讃歎したてまつる。
爾時弥勒善薩。従座而起。偏袒右肩。 爾の時に弥勒菩薩、座より起って、偏に右の肩を袒にし
合掌向仏。而説偈言 合掌し、仏に向いたてまつりて、偈を説いて言さく、
仏説希有法 昔所未曽聞 仏希有の法を説きたもう 昔より未だ曽て聞かざる所なり
世尊有大力 寿命不可量 世尊は大力有して 寿命量るべからず
無数諸仏子 聞世尊分別 無数の諸の仏子 世尊の分別して
説得法利者 歓喜充遍身 法利を得る者を説きたもうを聞いて 歓喜身に充遍す
448
或住不退地 或得陀羅尼 或は不退の地に住し 或は陀羅尼を得
或無礙楽説 万億旋総持 或は無礙の楽説 万億の旋総持あり
或有大千界 微塵数菩薩 或は大千界 微塵数の菩薩有って
各各皆能転 不退之法輪 各各に皆能く 不退の法輪を転ず
復有中千界 微塵数菩薩 復中千界 微塵数の菩薩有って
各各皆能転 清浄之法輪 各各に皆能く 清浄の法輪を転ず
復有小千界 微塵数菩薩 復小千界 微塵数の菩薩有って
余各八生在 当得成仏道 余各八生在って 当に仏道を成ずることを得ベし
或有四三二 如此四天下 或は四三二 此の如き四天下
微塵数菩薩 随数生成仏 微塵数の菩薩有って 数の生に随って成仏せん
或一四天下 微塵数菩薩 或は一四天下 微塵数の菩薩
余有一生在 当得一切智 余一生在ること有って 当に一切智を得べし
449
如是等衆生 聞仏寿長遠 是の如き等の衆生 仏寿の長遠なることを聞いて
得無量無漏 清浄之果報 無量無漏 清浄の果報を得
復有八世界 微塵数衆生 復八世界 微塵数の衆生有って
聞仏説寿命 皆発無上心 仏の寿命を説きたもうを聞いて 皆無上の心を発しつ
世尊説無量 不可思議法 世尊無量 不可思議の法を説きたもうに
多有所饒益 如虚空無辺 多く饒益する所有ること 虚空の無辺なるが如し
雨天曼陀羅 摩訶曼陀羅 天の曼陀羅 摩訶曼陀羅を雨らして
釈梵如恒沙 無数仏土来 釈梵は恒沙の如く 無数の仏土より来れり
雨栴檀沈水 繽紛而乱墜 栴檀沈水を雨らして 繽紛として乱れ墜つること
如鳥飛空下 供散於諸仏 鳥の飛んで空より下るが如くにして 諸仏に供散し
天鼓虚空中 自然出妙声 天鼓虚空の中にして 自然に妙声を出し
天衣千万億 旋転而来下 天衣千万億 旋転して来下し
450
衆宝妙香炉 焼無価之香 衆宝の妙なる香炉に 無価の香を焼いて
自然悉周遍 供養諸世尊 自然に悉く周遍して 諸の世尊に供養したてまつる
其大菩薩衆 執七宝幡蓋 其の大菩薩衆は 七宝の幡蓋
高妙万億種 次第至梵天 高妙にして万億種なるを執って 次第に梵天に至る
一一諸仏前 宝幢懸勝幡 一上の諸仏の前に 宝幢に勝幡を懸けたり
亦以千万偈 歌詠諸如来 亦千万の偈を以て 諸の如来を歌詠したもう
如是種種事 昔所未曽有 是の如き種種の事 昔より未だ曽て有らざる所なり
聞仏寿無量 一切皆歓喜 仏寿の無量なることを聞いて 一切皆歓喜す
仏名聞十方 度饒益衆生 仏の名十方に聞えて 広く衆生を饒益したもう
一切具善根 以助無上心 一切善根を具して 以て無上の心を助く
爾時仏告。弥勒菩薩摩訶薩。 爾の時に仏、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、
阿逸多。其有衆生。 阿逸多、其れ衆生有って、
聞仏寿命。長遠如是。 仏の寿命の、長遠是の如くなるを聞いて、
451
乃至能生。一念信解。 乃至能く一念の信解を生ぜば、
所得功徳。無有限量。 所得の功徳限量有ること無けん。
若有善男子。善女人。 若し善男子、善女人有って、
為阿耨多羅三藐三菩提故。 阿耨多羅三藐三菩提の為の故に、
於八十万億。那由他劫。行五波羅蜜。 八十万億那由他劫に於て、五波羅蜜を行ぜん。
檀波羅蜜。尸羅波羅蜜。羼提波羅蜜。 檀波羅蜜、尸羅波羅蜜、羼提波羅蜜、
毘梨耶波羅蜜。禅波羅蜜。除般若波羅蜜。 毘梨耶波羅蜜、禅波羅蜜なり。般若波羅蜜をば除く。
以是功徳。比前功徳。 是の功徳を以て、前の功徳に比ぶるに、
百分千分。百千万億分。不及其一。 百分、千分、百千万億分にして、其の一にも及ばず、
乃至算数譬喩。所不能知。 乃至算数譬喩も、知ること能わざる所なり。
若善男子。有如是功徳。 若し善男子、是の如き功徳有って、
於阿耨多羅三藐三菩提退者。無有是処。 阿耨多羅三藐三菩提に於て退すといわば、是の処有ること無けん。
爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、
若人求仏慧 於八十万億 若し人仏慧を求め 八十万億
452
那由他劫数 行五波羅蜜 那由他の劫数に於て 五波羅蜜を行ぜん
於是諸劫中 布施供養仏 是の諸の劫の中に於て 仏
及縁覚弟子 并諸菩薩衆 及び縁覚の弟子 并びに諸の菩薩衆に布施し供養せん
珍異之飲食 上服与臥具 珍異の飲食 上服と臥具と
栴檀立精舎 以園林荘厳 栴檀をもって精舎を立て 園林を以て荘厳せる
如是等布施 種種皆微妙 是の如き等の布施 種種に皆微妙なるを
尽此諸劫数 以廻向仏道 此の諸の劫数を尽して 以て仏道に廻向せん
若復持禁戒 清浄無欠漏 若し復禁戒を持って 清浄にして欠漏無く
求於無上道 諸仏之所歎 無上道の 諸仏の歎めたもう所なるを求めん
若復行忍辱 住於調柔地 若し復忍辱を行じて 調柔の地に住し
設衆悪来加 其心不傾動 設い衆の悪来り加うとも 其の心傾動せざらん
諸有得法者 懐於増上慢 諸の得法の者有りて 増上慢を懐ける
453
為斯所軽悩 如是亦能忍 斯が為に軽しめ悩まされん 是の如きをも亦能く忍ばん
若復勤精進 志念常堅固 若し復勤めて精進し 志念常に堅固にして
於無量億劫 一心不懈怠 無量億劫に於て 一心に懈怠せざらん
又於無数劫 住於空閑処 又無数劫に於て 空閑の処に住して
若坐若経行 除睡常摂心 若しは坐し若しは経行し 睡を除いて常に心を摂めん
以是因縁故 能生諸禅定 是の困縁を以ての故に 能く諸の禅定を生じ
八十億万劫 安住心不乱 八十億万劫に 安住して心乱れず
持此一心福 願求無上道 此の一心の福を持って 無上道を願求し
我得一切智 尽諸禅定際 我一切智を得て 諸の禅定の際を尽さんと
是人於百千 万億劫数中 是の人百千 万億の劫数の中に於て
行此諸功徳 如上之所説 此の諸の功徳を行ずること 上の所説の如くならん
有善男女等 聞我説寿命 善男女等有って 我が寿命を説くを聞きいて
454
乃至一念信 其福過於彼 乃至一念も信ぜば 其の福彼に過ぎたらん
若人悉無有 一切諸疑悔 若し人悉く 一切の諸の疑悔有ること無く
深心須臾信 其福為如此 深心に須臾も信ぜん 其の福此の如くなることを為
其有諸菩薩 無量劫行道 其れ諸の菩薩の 無量劫に道を行ずる有って
聞我説寿命 是則能信受 我が寿命を説くを聞いて 是れ則ち能く信受せん
如是諸人等 頂受此経典 是の如き諸人等 此の経典を頂受して
願我於未来 長寿度衆生 我未来に於て 長寿にして衆生を度せんこと
如今日世尊 諸釈中之王 今日の世尊の 諸釈の中の王として
道場師子吼 説法無所畏 道場にして師子吼し 法を説きたもうに畏るる所無きが如く
我等未来世 一切所尊敬 我等も未来世に 一切に尊敬せられて
坐於道場時 説寿亦如是 道場に坐せん時 寿を説くこと亦是の如くならんと願わん
若有深心者 清浄而質直 若し深心有らん者 清浄にして質直に
455
多聞能総持 随義解仏語 多聞にして能く総持し 義に随って仏語を解せん
如是諸人等 於此無有疑 是の如き諸人等 此に於て疑有ること無けん
又阿逸多。若有聞仏。寿命長遠。 又阿逸多、若し仏の寿命長遠なるを聞きいて、
解其言趣。是人所得功徳。 其の言趣を解する有らん。是の人の所得の功徳、
無有限量。能起如来。無上之慧。 限量有ること無くして、能く如来の無上の慧を起さん。
何況広聞是経。若教人聞。 何に況んや、広く是の経を聞き、若しは人をしても聞かしめ、
若自持。若教人持。 若しは自らも持ち、若しは人をしても持たしめ、
若自書。若教人書。 若しは自らも書き、若しは人をしても書かしめ、
若以華香瓔珞。幢幡繪蓋。 若しは華香、瓔珞、幢幡、繪蓋、
香油蘇燈。供養経巻。 香油、蘇燈を以て、経巻に供養せんをや。
是人功徳。無量無辺。能生一切種智。 是の人の功徳無量無辺にして、能く一切種智を生ぜん。
阿逸多。若善男子。善女人。 阿逸多、若し善男子、善女人、
聞我説寿命長遠。深心信解。 我が寿命長遠なるを説とくを聞いて、深心に信解せば、
則為見仏。常在耆闍崛山。 則ち為れ、仏常に耆闍崛山に在して、
456
共大菩薩。諸声聞衆。囲遶説法。 大菩薩、諸の声聞衆の、囲遶せると共に説法するを見、
又見此娑婆世界。其地瑠璃。坦然平正。 又此の娑婆世界、其の地瑠璃にして、坦然平正に、
閻浮提檀金。以界八道。宝樹行列。 閻浮檀金以て八道を界い、宝樹行列し、
諸台楼観。皆悉宝成。其菩薩衆。 諸台楼観、皆悉く宝をもって成じて、其の菩薩衆、
咸処其中。若有能如是観者。 咸く其の中に処せるを見ん。若し能く是の如く観ずること有らん者は、
当知是為。深信解相。 当に知るべし、是を深信解の相と為す。
又復如来滅後。若聞是経。 又復、如来の滅後に、若し是の経を聞いて、
而不毀呰。起随喜心。当知己為。 而も毀呰せずして随喜の心を起さん。当に知るべし、
深信解相。何況。読誦受持之者。 已に深信解の相と為す。何に況んや、之を読誦し、受持せん者をや。
斯人則為。頂戴如来。 斯の人は、則ち為れ如来を頂戴したてまつるなり。
阿逸多。是善男子。善女人。 阿逸多、是の善男子、善女人は、
不須為我。復起塔寺。及作僧坊。 我が為に復塔寺を起て、及び僧坊を作り、
以四事。供養衆僧。所以者何。 四事を以て衆僧を供養することを須いず。所以は何ん。
457
是善男子。善女人。 是の善男子、善女人の、
受持読誦。是経典者。 是の経典を受持し、読誦せん者は、
為已起塔。造立僧坊。供養衆僧。 為れ已に塔を起て、僧坊を造立し、衆僧を供養するなり。
則為以仏舎利。起七宝塔。高広漸小。 則ち為れ仏舎利を以て、七宝の塔を起て、高広漸小
至于梵天。懸諸幡蓋。及衆宝鈴。 にして梵天に至り、諸の幡蓋、及び衆の宝鈴を懸け、
華香瓔珞。抹香塗香焼香。衆鼓伎楽。 華香、瓔珞、抹香、塗香、焼香、衆鼓、伎楽、
簫笛箜篌。種種舞戯。 簫笛、空篌、種種の舞戯あって、
以妙音声。歌唄讃頌。 妙なる音声を以て、歌唄讃頌するなり。
則為已於。無量千万億劫。作是供養已。 則ち為れ、已に無量千万億劫に於て、是の供養を作し已るなり。
阿逸多。若我滅後。 阿逸多、若し我が滅後に、
聞是経典。有能受持。 是の経典を聞いて能く受持し、
若自書。若教人書。 若しは自らも書き、若しは人をしても書かしむること有らんは、
則為起立僧坊。以赤栴檀。 則ち為れ、僧坊を起立し、赤栴檀を以て、
作諸殿堂。三十有二。高八多羅樹。 諸の殿堂を作ること三十有二、高さ八多羅樹、
高広厳好。百千比丘。於其中止。 高広厳好にして、百千の比丘、其の中に於て止み、
園林浴池。経行禅窟。衣服飲食。牀蓐湯薬。園林、浴池、経行、禅窟、衣服、飲食、牀蓐、湯薬、
458
一切楽具。充満其中。 一切の楽具、其の中に充満せん。
如是僧坊。堂閣若干。百千万億。 是の如き僧坊、堂閣、若干百千万億にして、
其数無量。以此現前。 其の数無量なる、此を以て現前に、
供養於我。及比丘僧。 我及び比丘僧に供養するなり。
是故我説。如来滅後。若有受持読誦。 是の故に我説く。如来の滅後に、若し受持し、読誦し、
為他人説。若自書。若教人書。 他人の為に説き、若しは自も書き、若しは人をしても書かしめ、
供養経巻。 経巻を供養すること有らんは、
不須復起塔寺。及造僧坊。供養衆僧。 復塔寺を起て、及び僧坊を造り、衆僧を供養することを須いず。
況復有人。能持是経。兼行布施。 況んや復、人有って、能く是の経を持ち、兼ねて布施、
持戒。忍辱。精進。一心。智慧。 持戒、忍辱、精進、一心、智慧を行ぜんをや。
其徳最勝。無量無辺。 其の徳最勝にして、無量無辺ならん。
譬如虚空。東西南北。四維上下。 譬えば、虚空の東西南北、四維上下、
無量無辺。是人功徳。亦復如是。 無量無辺なるが如く、是の人の功徳も、亦復是の如し。
無量無辺。疾至一切種智。 無量無辺にして、疾く一切種智に至らん。
459
若人読誦。受持是経。為他人説。 若し人、是の経を読誦し、受持し、他人の為に説き、
若自書。若教人書。復能起塔。 若しは自らも書き、若しは人をしても書かしめ、復能く塔を起て、
及造僧坊。供養讃歎。声聞衆僧。 及び僧坊を造り、声聞の衆僧を供養し讃歎し、
亦以百千万億。讃歎之法。讃歎菩薩功徳。 亦百千万億の讃歎の法を以て、菩薩の功徳を讃歎し、
又為他人。種種因縁。 又他人の為に、種種の因縁をもって、
随義解説。此法華経。復能清浄持戒。 義に随って此の法華経を解説し、復能く清浄に戒を持ち、
与柔和者。而共同止。忍辱無瞋。 柔和の者と共に同止し、忍辱にして瞋無く、
志念堅固。常貴坐禅。得諸深定。 志念堅固にして、常に坐禅を貴び、諸の深定を得、
精進勇猛。摂諸善法。利根智慧。 精進勇猛にして、諸の善法を摂し、利根智慧にして、
善答問難。阿逸多。若我滅後。 善く問難に答えん。阿逸多、若し我が滅後に、
諸善男子。善女人。受持読誦。 諸の善男子、善女人、是の経典を受持し、読誦せん者、
是経典者。復有如是。諸善功徳。 復是の如き諸の善功徳有らん。
当知是人。已趣道場。 当に知しるべし、是の人は已に道場に趣き、
近阿耨多羅三藐三菩提。坐道樹下。 阿耨多羅三藐三菩提に近づいて、道樹の下に坐せるなり。
460
阿逸多。是善男子。善女人。 阿逸多、是の善男子、善女人の、
若坐若立。若経行処。 若しは坐し、若しは立ち、若しは経行せん処、
此中便応起塔。一切天人。 此の中には、便ち塔を起つべし。一切の天、人、
皆応供養。如仏之塔。 皆応に供養すること、仏の塔の如くすべし。
爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、
若我滅度後 能奉持此経 若し我が滅度の後に 能く此の経を奉持せん
若我滅度後 能奉持此経 斯の人の福無量なること 上の所説の如し
是則為具足 一切諸供養 是れ則ち為れ 一切の諸の供養を具足し
以舎利起塔 七宝而荘厳 舎利を以て塔を起て 七宝をもって荘厳し
表刹甚高広 漸小至梵天 表刹甚だ高広に 漸小にして梵天に至り
宝鈴千万億 風動出妙音 宝鈴千万億にして 風の動かすに妙音を出し
461
又於無量劫 而供養此塔 又無量劫に於て 此の塔に
華香諸瓔珞 天衣衆伎楽 華香諸の瓔珞 天衣衆の伎楽を供養し
燃香油蘇燈 周帀常照明 香油蘇燈を燃して 周帀して常に照明するなり
悪世末法時 能持是経者 悪世末法の時 能く此の経を持たん者は
則為已如上 具足諸供養 則ち為れ已に上の如く 諸の供養を具足するなり
若能持此経 則如仏現在 若し能く此の経を持たんは 則ち仏の現在に
以牛頭栴檀 起僧坊供養 牛頭栴檀を以て 僧坊を起てて供養し
堂有三十二 高八多羅樹 堂三十二有って 高さ八多羅樹
上饌妙衣服 牀臥皆具足 上饌妙なる衣服 牀臥皆具足し
百千衆住処 園林諸浴池 百千衆の住処 園林諸の浴池
経行及禅窟 種種皆厳好 経行及び禅窟 種種に皆厳好にするが如し
若有信解心 受持読誦書 若し信解の心有って 受持し読誦し書き
462
若復教人書 及供養経巻 若しは復人をしても書かしめ 及び経巻を供養し
散華香抹香 以須曼瞻蔔 華香抹香を散じ 須曼瞻蔔
阿提目多伽 薫油常燃之 阿提目多伽の 薫油を以て常に之を燃さん
如是供養者 得無量功徳 是の如く供養せん者は 無量の功徳を得ん
如虚空無辺 其福亦如是 虚空無辺なるが如く 其の福も亦是の如し
況復持此経 兼布施持戒 況んや復此の経を持って 兼ねて布施持戒し
忍辱楽禅定 不瞋不悪口 忍辱にして禅定を楽い 瞋らず悪口せざらんをや
恭敬於塔廟 謙下諸比丘 塔廟を恭敬し 諸の比丘に謙下して
遠離自高心 常思惟智慧 自高の心を遠離し 常に智慧を思惟し
有問難不瞋 随順為解説 問難すること有らんに瞋らず 随順して為に解説せん
若能行是行 功徳不可量 若し能く是の行を行ぜば 功徳量るべからず
若見此法師 成就如是徳 若し此の法師の 是の如き徳を成就せるを見ては
463
応以天華散 天衣覆其身 応に天華を以て散じ 天衣を其の身に覆い
頭面接足礼 生心如仏想 頭面に足を接して礼し 心を生じて仏の想の如くすべし
又応作是念 不久詣道場 又応に是の念を作すべし 久しからずして道場に詣して
得無漏無為 広利諸天人 無漏無為を得 広く諸の天人を利せんと
其所住止処 経行若坐臥 其の所住止の処 経行し若しは坐臥し
乃至説一偈 是中応起塔 乃至一偈をも説かん 是の中には応に塔を起てて
荘厳令妙好 種種以供養 荘厳し妙好ならしめて 種種に以て供養すべし
仏子住此地 則是仏受用 仏子此の地に住すれば 則ち是れ仏受用したもう
常在於其中 経行若坐臥 常に其の中に在して 経行し若しは坐臥したまわん